日立Astemo(アステモ)は2021年1月18日、事業戦略説明会をオンラインで開催した。同社は日立オートモティブシステムズとケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して2021年1月1日付で発足した新会社だ。出資比率は日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%となる。上場については「可能性はあるかもしれないが現時点では検討していない」(日立Astemo CEOのブリス・コッホ氏)という。
日立Astemo(アステモ)は2021年1月18日、事業戦略説明会をオンラインで開催した。同社は日立オートモティブシステムズとケーヒン、ショーワ、日信工業が経営統合して2021年1月1日付で発足した新会社だ。出資比率は日立製作所が66.6%、ホンダが33.4%となる。
上場については「可能性はあるかもしれないが現時点では検討していない」(日立Astemo CEOのブリス・コッホ氏)という。
4社の経営統合で各製品のシェアが伸びることを生かし、自動車の電動化やシャシーの統合制御に注力する。また、日立製作所と協力して自動運転システム向けのソフトウェアやECU(電子制御ユニット)の開発を強化していく。サプライチェーンのコスト削減や工場・拠点運営の最適化、販管費の抑制も進める。こうした取り組みにより、2021年度に売上収益1.6兆円とEBITDA(Earnings before interest, taxes, depreciation, and amortization)を10%以上、2025年度には売上収益2兆円、EBITDAを15%を目指す(2019年度の売上収益は1.5兆円、EBITDAは6.6%)。
日立Astemoの組織体制としては、製品軸の事業部、技術開発や営業などグローバルファンクション、日米欧中アジアのそれぞれを担当する地域統括本部に分けられる。日立Astemoの代表取締役 プレジデント&CEOは日立オートモティブシステムズの代表取締役 プレジデント&CEOだったブリス・コッホ氏が、もう1人の代表取締役は、日立オートモティブシステムズでエグセクティブヴァイスプレジデントだった上桶亨氏が務める。
取締役にはケーヒン 代表取締役 取締役社長だった相田圭一氏が就任した。相田氏は技術開発本部の責任者も兼務する。ショーワ 代表取締役 取締役社長の杉山伸幸氏はモーターサイクル事業部のトップに、日信工業 代表取締役社長の川口泰氏はガバナンス担当の責任者となった。
4社の経営統合により、生産拠点数は日米欧中アジアの141カ所となる。生産拠点の統廃合について具体的な決定はしていないが、効率化やスリム化を検討しているという。取引先は商用車を含む四輪車、二輪車などグローバルで、地域別の構成比の見通しとしては欧州が7%と少ないものの、日本、米州、中国・アジアの3地域でバランスよく売り上げを確保する。4社のうち1社が展開してきた製品を他の3社の販路でも提案する「クロスセル」によってシナジーを創出する。
優先的に投資するのは、(1)電動車向けのモーターやインバーターとその制御ソフトウェア(2)自動運転システムやADAS(先進運転支援システム)向けのECUとソフトウェア(3)ブレーキやサスペンション、ステアリングの統合制御(4)二輪車の電動化と姿勢制御技術だ。二輪車の電動化は特にインドで需要が見込まれており、四輪車での4社の技術を組み合わせて対応する。内燃機関に関しては、ハイブリッド車(HEV)向けの燃費改善技術に投資を集中させ、“残存者利益”が見込める製品で競争力を高める。研究開発は4社の中で重複する分野があることから、「研究開発費を増やさず、同じ人数でも効率的に進められる」(コッホ氏)。
地域ごとにそれぞれ異なる戦略を推進する。米州では、数量拡大が見込める既存の取り引きを通して電動化関連の売り上げを拡大する。自動車メーカー同士のアライアンスを通じた水平展開を進める。アジアでは、4社の強みを結集して二輪車向けの製品を提案する。また、インドでの先進技術に対する需要拡大に対応し、四輪車向けの電動化技術やADASを拡販する。中国では、現地自動車メーカーを含む取引先への電動化製品の提案を強化するとともに、e-Axleサブシステムの協業の機会を探る。欧州は、買収したソフトウェア開発会社ゼネオス(seneos)やシャシー・ブレーキ・インターナショナルの資産を活用する。
日本では、さらなるアライアンスを推進するとともに、日立グループやパートナーとともに注力分野に取り組む。車載ソフトウェアのセキュリティや無線ネットワークによるアップデート(OTA:Over-The-Air)、ソフトウェアを活用した予防メンテナンスなどにおいては、日立製作所のデジタルソリューション「Lumada」を活用していく。
世界各国でカーボンニュートラルに向けた政策が推進されていることを受けて、2030年までに生産ラインのカーボンニュートラル化と、製品の使用によって発生するCO2の半減に取り組む。生産拠点の最適化によって生産効率を改善するとともに、老朽設備の改修や更新による省エネ化を進める。工場における再生可能エネルギーの活用も最大限追求する。製品の使用に関するCO2排出削減は、電動コンポーネントの提供に加えて、エンジンマネジメント、自動運転システムやADASによる燃費改善、シャシー部品の軽量化によって実現する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.