2021年は、グリーン成長戦略の実行に向けて多くの企業が動き出す1年となるでしょう。グリーン成長戦略でどのような目標が掲げられたか、自動車を中心におさらいします。
2020年末、経済産業省が中心となって「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表しました。2020年10月に首相の菅義偉氏が宣言した「2050年にカーボンニュートラルな社会を実現」という目標に向けて、企業が温暖化対応を成長につなげられるよう、産業政策をまとめたのがグリーン成長戦略です。エネルギー産業だけでなく、輸送分野や自動車を含む製造業など14分野を対象に高い目標を定めています。
2021年は、グリーン成長戦略の実行に向けて多くの企業が動き出す1年となるでしょう。グリーン成長戦略でどのような目標が掲げられたか、人やモノの移動に関わる分野を中心におさらいします。
グリーン成長戦略では温暖化対応について「従来の発想を転換し、積極的な対策を行うことが、産業構造や社会経済の変革をもたらし、次なる大きな成長につなげていく」(グリーン成長戦略本文)ということを前提にしています。しかし、「実行するのは並大抵の努力ではできない」(同)ということに政府として理解を示し、「新しい時代をリードしていくチャンスの中、大胆な投資をしてイノベーションを起こす民間企業の前向きな挑戦を全力で応援するのが政府の役割である」(同)としています。
部門ごとの大まかな方針がまとめられており、電力部門では脱炭素化が大前提となります。再生可能エネルギーで全ての電力需要をカバーすることは困難であるとし、2050年の発電量の50〜60%を再エネでまかなうことを「参考値」として議論を深めながら最大限に導入することを目指します。発電量の不安定さをカバーするため蓄電池の活用も進めます。
火力発電は必要最小限で使わざるを得ないと考え、CO2回収を前提に選択肢として最大限追求していきます。また、水素発電も選択肢としては同様で、需要と供給を拡大してコスト低減を進めることで水素産業を創出します。原子力発電は安全性を向上する次世代炉の開発に取り組みながら、「依存度を可能な限り低減しながら、引き続き最大限活用する」(グリーン成長戦略本文)としています。水素やアンモニアを燃料とした発電が10%、原子力発電とCO2回収が前提の火力発電で30〜40%という構成比を「参考値」としていきます。
製造業や運輸、家庭など電力部門以外では、電化が戦略の中心となります。熱を使う需要には、水素など脱炭素燃料や、化石燃料とCO2の回収や再利用で対応します。電化が進むことにより、2050年の電力需要は現状の30〜50%増となる1.3兆〜1.5兆kWhに拡大する見込みです。そのため省エネ関連産業を成長分野として育成していきます。電力ネットワークのデジタル制御も課題となります。電力系統の運用を高度化するスマートグリッド、天候によって出力が変動する太陽光発電や風力発電の需給調整、インフラの保守点検などでデジタル技術での対応が求められます。
加えて、エネルギーの有効活用につながる取り組みとして、自動車や航空機、鉄道などモビリティの自動運行、製造ラインの自動化、再生可能エネルギーと蓄電池をエネルギーマネジメントシステムで最適制御するスマートハウスなどが挙げられています。
これらの取り組みには、技術開発だけでなく、社会実装や量産投資によるコスト低減が不可欠です。グリーン成長戦略では実現に向けて予算や税制、金融、カーボンプライシングなど規制改革や標準化、国際連携など政策を総動員します。民間企業が保有する240兆円の現預金を積極的な投資に向かわせ、2030年で年間90兆円、2050年で同190兆円の経済効果を見込んでいます。
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