日立が次期中計へ1兆円の成長投資、生成AIや半導体/バッテリーの製造などで製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

日立製作所が2023年度連結業績とともに「2024中期経営計画(2024中計)」の進捗状況について説明。2025〜2027年度の次期中計でのさらなる成長に向けて、2024年度内に総計1兆円の成長投資を行う方針を示した。

» 2024年04月30日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]
日立の小島啓二氏 日立の小島啓二氏 出所:日立製作所のX

 日立製作所(以下、日立)は2024年4月26日、オンラインで会見を開き、2023年度(2024年3月期)連結業績とともに2022〜2024年度の中期経営計画「2024中期経営計画(2024中計)」の進捗状況について説明した。2023年度決算では、事業の中核とする3セクター(DSS:デジタルシステム&サービス、GEM:グリーンエナジー&モビリティ、CI:コネクティブインダストリーズ)の業績が増収増益となるとともに、主要業績目標であるコアFCF(コアフローキャッシュフロー)も大幅に増加した。2024中計については「目標とする財務構造をおおむね達成する見通し」(日立 執行役社長兼CEOの小島啓二氏)としており、2025〜2027年度の次期中計でのさらなる成長に向けて2024年度内に総計1兆円の成長投資を行う方針を示した。

 2024中計の目標は、3セクターにおける2021〜2024年度の年平均売上高成長率が5〜7%、利益指標であるAdjusted EBITA率が12%、ROIC(投下資本利益率)が10%、EPS(1株当たり利益)の年平均成長率が10〜14%、3年累計のコアFCFが1.2兆円となっている。今回の2023年度連結業績で発表した2024年度の業績見通しによれば、3セクターの売上高は9兆円、Adjusted EBITAが1.04兆円、ROICが9.5%、EPSが655円、3年累計のコアFCFが1.5兆円となり、2024中計の目標はほぼ達成できる見込みだ。

2024中計の進捗状況 2024中計の進捗状況。目標とする財務構造をおおむね達成する見通しだ[クリックで拡大] 出所:日立

 ただし、日立エナジーと鉄道BU(ビジネスユニット)の事業進捗が当初想定を大きく上回って伸びている影響により、3セクターの売上高が大きく上振れする一方で、Adjusted EBITA率は11.5%と目標の12%に届かないという結果になっている。小島氏は「日立エナジーと鉄道BUは収益構造の改善を進めている途上であり、これらの事業の売上高が大きく伸びたことでその分だけAdjusted EBITA率を押し下げた。また、為替の影響も大きい。当社では、円安によって売上高が増える一方で、利益を押し下げる効果があるからだ」と説明する。

「フロント部隊にもキャッシュ意識が浸透」

 足元の売上高の成長をけん引しているのが、GX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の需要に基づく受注の拡大だ。2023年度の受注額は、GXとの関連が深い日立エナジーと鉄道BUを傘下に持つGEMセクターの4.8兆円を筆頭に、DXの需要を受けるDSSセクターが2.8兆円、CIセクターが3兆円を記録した。GEMセクターについては、長期計画での製品納入やサービス契約を顧客との間で結ぶ「フレームワークアグリーメント」を推進している関係もあり、バックログ(受注残)は10.2兆円に達している。

2024中計における売上高の推移 2024中計における売上高の推移[クリックで拡大] 出所:日立

 利益の向上についても、収益性の高いデジタルソリューション群「Lumada」を中核とするLumada事業の浸透が進んでいる。2023年度の全売上高に対するLumada事業の比率は27%、Lumada事業のAdjusted EBITA率は15%となっており、2024年度にはそれぞれ29%、16%に引き上げられる見通しだ。

Lumada事業の推移 Lumada事業の推移[クリックで拡大] 出所:日立

 また、グローバルで企業経営を進める中で、経済環境やパンデミック、地政学などさまざまなリスクへの対応が利益を安定させるためには不可欠になる。「CRMO(最高リスク管理責任者)を中心にリスクマネジメントシステムを強化しており、損失低減と当期利益の安定化という成果が得られている」(小島氏)という。

リスクマネジメントシステム強化の効果 リスクマネジメントシステム強化の効果[クリックで拡大] 出所:日立

 小島氏が2024中計で最も重視している指標の一つがコアFCFだ。当期利益から効率良くコアFCFを作り出すコンバージョンレートを全てのセクターとBUの経営指標として導入しオペレーションの効率化を図っており、その成果として3年累計のコアFCFが目標の1.2兆円を上回る1.5兆円となる見込みだ。同氏は「フロント部隊にもキャッシュ意識が浸透し、長期プロジェクトの契約条件の見直し、インフレや物価上昇に対応するプライシングの見直しなども素早く行えるようになっている」と強調する。

コアFCFと資産売却によるキャッシュ創出の推移 コアFCFと資産売却によるキャッシュ創出の推移[クリックで拡大] 出所:日立

 コアFCFを増やすとともにさまざまな資産売却も進めてきたことから、3年累計でのキャッシュ創出額は2024中計目標の2.3兆円から2.8兆円に積み増されている。その使い道となるキャピタルアロケーションについては、成長投資に1.8兆円、株主還元に1兆円の配分とした。株主還元では2024年度内に自己株式取得を行うとともに、2023年度期末配当を中間配当に対して20円増の100円とした。

キャッシュ創出に対するキャピタルアロケーション キャッシュ創出に対するキャピタルアロケーション[クリックで拡大] 出所:日立
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