3年累計で1.8兆円とする成長投資については、2022〜2023年度で0.8兆円を費やしてきているため、2024年度は1兆円の投資枠があることになる。そこで、大型のM&Aは行わないものの、個別事業強化に加えて新たな成長機会の獲得に向けて4つの施策を実施する計画である。生成AI(人工知能)で0.3兆円、DX/GXで拡大する成長製造分野で0.2兆円、社会インフラ事業のサービス化加速で0.2兆円、案件に恵まれた際の機動的M&Aで0.3兆円という内訳になっている。
生成AIでは、ソフトウェア生産性向上、フロントラインワーカー生産性向上、データセンターへの投資を行う。ソフトウェア生産性向上は、主に日立社内でのソフトウェア開発リソースの有効活用につなげていく方針で、米国子会社のGlobalLogicにおける生成AI活用が中核となる。フロントラインワーカー生産性向上は、製造業をはじめとする現場業務での活用を目指すもので、デジタルツインを構築するインダストリアルメタバース開発を進めていくという。データセンターでは、2024年3月に発表したNVIDIAとの協業によるAIインフラ「Hitachi IQ」などへの投資を行う。
DX/GXで拡大する成長製造分野で対象となるのは、半導体製造とバッテリー製造で、CIセクターの強いプロダクトをデジタルで強化するという施策が中心になる。半導体製造では、傘下の日立ハイテクが得意とする半導体検査装置の測長SEMの開発を強化するとともに、後工程向けソリューションにも注力する。バッテリー製造では、次世代バッテリーの製造、リユース、リサイクルをつないだ循環型サービスの創生を目指すという。
社会インフラ事業のサービス化加速では、GEMセクターとCIセクターの強いプロダクトと関わる保守サービスをデジタル技術で強化することを目指す。総計150GWの導入実績を持つ日立エナジーのHDVC(高圧直流送電)、年間180億人が利用する鉄道BUの車両システムや信号システム、料金収受システム、市場で20万台が稼働するインダストリアルプロダクツBUが手掛けるスクリュー圧縮機などで、リアルタイムモニタリングや予兆診断などによって保守サービスの価値を高めていく方針だ。
なお、案件に恵まれた際の機動的M&Aについては「大型案件は想定していない。案件に恵まれた際とある通り、2024年度には実施せずに投資タイミングが2025年度にずれる可能性もある」(小島氏)としている。
日立の2023年度連結業績は、売上高が前年度比11%減の9兆7287億円、Adjusted EBITAが同3.7%増の9181億円、当期利益が同15%減の5498億円、コアFCFが同37%増の5714億円となった。売上高と当期利益の減少は日立金属や日立建機、日立Astemoの再編や2022年度の譲渡益の反動などによるものだ。中核となる3セクターについては、売上高が同12%増の8兆5643億円、Adjusted EBITAが20%増の8674億円となっており、2022年度から引き続き増収増益となっている。
2024年度連結業績見通しは、売上高が前年度比7%減の9兆円、Adjusted EBITAが同13%増の1兆350億円、当期利益が同9.1%増の6000億円、コアFCFが同16%減の4800億円。2023年度で事業再編がほぼ完了したこともあり、3セクターの業績見通しで売上高とAdjusted EBITAが連結業績と同じになっている。なお、これらの業績見通しは、タレスの鉄道信号関連事業の買収が2024年度第1四半期(4〜6月期)に完了する前提となっている。
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