日立は事業ポートフォリオ改革からサステナブル成長へ、日立Astemoも非連結化製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

日立製作所が2022年度決算と「2024中期経営計画」の進捗状況について説明。上場子会社がゼロとなり日立Astemoも非連結化することから、事業ポートフォリオ改革は一区切りとして今後はサステナブルな成長に経営の主軸を切り替えていく方針だ。

» 2023年04月28日 06時30分 公開
[朴尚洙MONOist]
日立の小島啓二氏 日立の小島啓二氏 出所:日立製作所のTwitter

 日立製作所(以下、日立)は2023年4月27日、オンラインで会見を開き、2022年度(2023年3月期)決算と2022〜2024年度の中期経営計画「2024中期経営計画(2024中計)」の進捗状況について説明した。2022年度決算は増収増益で全ての事業目標を達成したものの、2023年度の通期業績は事業環境が見通しづらいこともあって低めの目標に設定した。一方、2024中計については、2022年度末までに上場子会社がゼロとなり、車載システム事業を手掛ける日立Astemoも非連結化していくことから、「事業ポートフォリオ改革は一区切りとして今後はサステナブルな成長に経営の主軸を切り替える」(日立 執行役社長兼CEOの小島啓二氏)として、主要目標のうちコアFCF(コアフローキャッシュフロー)と株主還元の目安を変更した。

 小島氏は「社会イノベーション事業への集中を決断し、10年以上事業ポートフォリオ改革を継続してきたが、2022年度内に上場子会社はゼロとなり、2023年9月をめどに日立Astemoも株式上場を目指して非連結化する。これで事業ポートフォリオ改革は一区切りとなり、2024中計はオーガニックな成長を中心としたサステナブル成長の実現で企業価値向上を目指す重要な転換点になる」と語る。

「2024中計」は事業ポートフォリオ改革からサステナブル成長への転換点に 「2024中計」は事業ポートフォリオ改革からサステナブル成長への転換点に[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 実際に2013〜2022年度の累計で、獲得アセットの売上高合計は約3兆1000億円、買収金額は約3兆6000億円、譲渡アセットの譲渡金額は売上高合計は約5兆円、譲渡金額は約2兆円に上る。その結果として、電力、鉄道などを中心に欧州、デジタル、電力、鉄道、ロボティクスなどで北米の資産が大きく積み増され、事業アセットのグローバル化を果たした。大型買収となった、日立ハイテク、日立エナジー、GlobalLogicは「成長エンジンとして大きく貢献している」(小島氏)という。

これまでの事業ポートフォリオ改革 これまでの事業ポートフォリオ改革[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 2024中計の主要目標のうち、売上高の年平均成長率5〜7%、利益指標のAdjusted EBITA(調整後営業利益−買収に伴う無形資産などの償却費+持ち分法損益)率12%、ROIC(投下資本利益率)10%、EPS(1株当たり利益)の年平均成長率10〜14%という数字に変更はない。ただしコアFCFは、上場子会社と日立Astemoの利益、キャッシュフローを減産するなどして3年累計で1兆4000億円から1兆2000億円に下げた。

「2024中計」の主要目標をアップデート 「2024中計」の主要目標をアップデート[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 併せて株主還元についても、コアFCFの約2分の1(7000億円)としていたところを、8000億〜9000億円に変更している。これは、3年累計のキャッシュ創出の総額は日立Astemoを非連結化しても資産売却益が入るため変わらないが、コアFCFは減少するのでその約2分の1を株主還元総額とすると減少してしまうためだ。今後は、コアFCFの約2分の1と当期利益の約2分の1の双方を考慮して株主還元に十分な金額を割り当てていく方針である。

キャピタルアロケーションポリシー キャピタルアロケーションポリシー[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 また、2024中計の主要目標の達成で重要な役割を果たすのがデジタルソリューション群「Lumada」の事業である。ここまでLumada事業は高い成長率を実現しており、2024年度には日立全体の売上高の3分の1、利益の4割強を占めるようになるという。

Lumada事業の売上高と利益の成長見通し Lumada事業の売上高と利益の成長見通し[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 Lumadaの強みは顧客との協創から生まれたユースケースをソリューションとしてスケールしていくことで利益を確保していく点にある。2022年度のユースケース登録数は2018年度比2倍以上の1330、ソリューション登録数は同3倍近い202と大幅に増加しており、日立全体の利益率向上をけん引している。また、将来的なさらなる利益率向上の施策として「労働集約型でコストのかかるデジタルエンジニアリングとシステムインテグレーションについて、AI(人工知能)化やローコード/ノーコードの活用などでコストを抑えることも選択肢に入って来る」(小島氏)とした。

Lumada事業の利益率 Lumada事業の利益率。ユースケースとソリューションも着実に増えている[クリックで拡大] 出所:日立製作所

 この他2024中計では、2030年度におけるGHG(温室効果ガス)プロトコルのスコープ1、2のカーボンニュートラル実現に向けて2010年度比半減というCO2排出削減目標を掲げている。足元は既にこれを上回るペースで進捗しており、2024年度に2010年度比で64%削減という見通しになっている。スコープ3に関わる顧客の脱炭素への貢献では、年1億トンを目標としていたが、こちらも年1億2610万トンに増えている。

カーボンニュートラル関連は目標を上回る進捗 カーボンニュートラル関連は目標を上回る進捗[クリックで拡大] 出所:日立製作所
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