GAFAMに対抗する日本の武器は「現場データ」にあり、JEITAが世界生産額見通し発表製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

電子情報技術産業協会(JEITA)は2025年版の「電子情報産業の世界生産見通し」を発表した。世界生産額は史上初めて4兆ドルを突破。世界市場の中で日系企業はどう戦うべきか。

» 2025年12月18日 07時15分 公開
[安藤照乃MONOist]

 電子情報技術産業協会(JEITA)は2025年12月16日、東京都内とオンラインで会見を開き、同日発表した2025年版の「電子情報産業の世界生産見通し」について説明した。生成AI(人工知能)需要の拡大を追い風に、2025年の世界生産額は史上初めて4兆ドル(約622兆円)を突破し、翌2026年も過去最高を更新し続ける見通しだ。

生成AIの爆発的普及で軒並み好調

JEITA 会長の漆間啓氏 JEITA 会長の漆間啓氏

 2025年の電子情報産業の世界生産額は前年比11%増の4兆1184億ドルとなり、史上初の4兆ドル超えが見込まれている。続く2026年には、さらに10%増の4兆5103億ドルに達する予測だ。JEITA 会長の漆間啓氏(三菱電機 代表執行役 執行役社長 CEO)は、「生成AIの爆発的な普及や、世界的なデータセンター需要の拡大を背景に、半導体、電子部品、ソリューションサービスは軒並み好調」と市況感を語る。

電子情報産業の世界生産額 電子情報産業の世界生産額[クリックで拡大] 出所:JEITA

 日系企業の世界生産額も堅調だ。2025年は前年比2%増の41兆8134億円、2026年予測は同3%増の43兆1450億円と回復基調にある。2025年10月のWindows 10のサポート終了に伴うPCの更新需要に加え、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)投資によるソリューションサービスの成長が全体を押し上げると分析している。また、電子工業の国内生産額についても、2026年には11兆9116億円(前年比3%増)への伸長が予測されており、国内回帰やインフラ投資の効果が表れ始めている。

電子情報産業の世界生産額 電子情報産業の世界生産額[クリックで拡大] 出所:JEITA

GAFAMとは違う土俵、「現場データ」に活路

 市場全体の急成長について、漆間氏は「いわゆるGAFAM(Google、Apple、Facebook(現Meta)、Amazon.com、Microsoft)などが手掛ける汎用的なAIサービスがけん引しており、クラウド基盤や汎用LLM(大規模言語モデル)の覇権は米IT企業が握っているのが現状だ」と冷静に分析する。

 このように海外企業のデジタルサービス/ソリューションを利用することで経常収支が赤字になってしまうデジタル赤字への対策として「海外企業のクラウドやAI基盤を利用すること自体は止められないが、その上で動くアプリケーションや、OT(制御技術)を中心とした産業領域での付加価値を日本企業が握ることで、海外へ流出する資金以上の価値を生み出す構造転換が必要」(漆間氏)と語り、変革のための戦略を示した。

世界生産額における日本企業シェア 世界生産額における日本企業シェア[クリックで拡大] 出所:JEITA

 その戦略とは、巨大IT企業らと正面から汎用モデルで競合するのではなく、日本が強みを持つ「現場データ(OTデータ)」の活用に活路を見いだすアプローチだ。バーチャル空間を中心に活動する海外企業に対し、製造現場やインフラ設備など、フィジカルな領域から得られる良質なリアルデータで対抗する。

 漆間氏は、「国内の産業分野の現場で生まれるOTデータは、極めて高品質な有効データであり、付加価値創出の源泉でもある」と強調。このOTデータをAIと組み合わせた「産業用特化型AI」を展開し、日本の得意技であるセンサー技術やハードウェアと擦り合わせることで、安全性や精密さを担保した独自の付加価値で対抗していく考えを示した。

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