日本オラクルが2026年度の事業戦略について説明。これまで推進してきたミッションクリティカルシステムのクラウドリフトに基づく基幹システムのモダナイゼーションの知見とノウハウをパートナーに展開する一方で、生成AIやAIエージェントを支えるデータとコンテキストを包含するAI-Readyなプラットフォームの構築に重点を置く方針である。
日本オラクルは2025年7月8日、東京都内で会見を開き、2026年度(2026年5月期)の事業戦略について説明した。これまで推進してきたミッションクリティカルシステムのクラウドへの移行(クラウドリフト)に基づく基幹システムのモダナイゼーションの知見とノウハウをパートナーに展開する一方で、生成AI(人工知能)やその進化系であるAIエージェントを支えるデータとコンテキストを包含するAI-Readyなプラットフォームの構築に重点を置く方針である。
オラクル(Oracle)の日本法人である日本オラクルは2025年10月で創業40周年を迎える。外資系大手IT企業として珍しい東証への上場からも同年4月で25周年となるなど、日本国内で事業活動を積み重ねてきた。同社 取締役 執行役 社長の三澤智光氏は「米国本社の2025年度売上高が前年度比8%増となり、クラウドを中核とした契約済み受注残(RPO)も大きく伸びている。日本オラクルも2025年度業績は通期で過去最高を達成し、14四半期連続で最高益を更新した。オラクルは米国本社も日本法人も再成長が始まったといっていい状態だ」と語る。
2026年度の重点施策はクラウドとAIだ。2025年度は、ミッションクリティカルシステムのクラウドリフトで「規模と業種を問わず圧倒的な実績を確立した」(三澤氏)。ERP(企業資源計画)など企業の基幹システムをクラウドネイティブなSaaSに移行するモダナイゼーションについても、オラクルが得意とする金融分野に加えて、競合ベンダーが強かった商社などにも採用が広がっている。また、競合ベンダーのユーザーだったホンダの導入事例では、従来比で2〜3%のコスト削減を実現しており、削減額として年間200億円のレベルが視野に入っているという。
このように、ミッションクリティカルシステムをクラウドリフトしてからモダナイゼーションする実績が多数積み上がってきている。2026年度は、日本オラクルが蓄積してきた知見とノウハウをパートナー企業に展開することに注力する方針である。
なお、同社のクラウドインフラである「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」は国内で10のリージョンで展開している。パートナー企業がOCIの運用を担う「Oracle Alloy」には富士通、NTT、野村総合研究所が加わっているが、これらAlloyパートナーが日本国内でのデータ主権や運用主権を持つソブリンクラウドを提供できるように、日本在住メンバーが24時間365日サポートを提供するJOC(Japan Operation Center)を稼働させたところだ。
もう1つの重点施策であるAIで注目しているのが、プロセスの自律的実行が可能なAIエージェントである。三澤氏は「生成AIの登場によって、ITシステムのユーザーインタフェースは自然言語に、ビジネスロジックもハードコードからAIに置き換わっていく。このAIを支えるデータプラットフォームの役割がより重要になってくる」と強調する。
ERPなどの基幹システムにおいてAI活用が叫ばれているが、現状ではシステムから得られるデータは外付けのAI専用データストアに蓄積されるだけになっている。「これではリアルタイム性を欠くし、データと併せて必要になるコンテキストから切り離されてしまっている」(三澤氏)。これに対して、オラクルのクラウドベースの基幹システムスイートである、大企業向けの「Oracle Fusion Cloud Applications」や中堅中小企業向けの「Oracle NetSuite」は、データとコンテキストを一元管理するシングルデータモデルを用いており、このことがリアルタイムかつ高精度なAIエージェントを実現する原動力になっている。
このシングルデータモデルに基づくAI-Readyなデータプラットフォームとして構築しているのが「Oracle Autonomous Data Platform」である。三澤氏は「AIという観点ではコンテキスト管理と併せてマルチモーダルデータへの対応も重要だ。また、AIエージェントは大量のトランザクションを生み出し、データベースにわがままなほどの要求をしてくる。この大量トランザクションにスケーラブルに対応できるのは、データベースシステムのベンダーであるオラクルだけだ」と述べる。
GPUを用いたAI基盤として高い評価を得るOCI、Oracle Fusion Cloud ApplicationsやOracle NetSuiteに組み込まれたAIエージェント機能、AI-ReadyなデータプラットフォームであるOracle Autonomous Data Platformに、最先端のAIモデルを組み合わせることで、オラクルはAIエージェントプラットフォームとして大きな強みを持つことになる。三澤氏は「AIがオラクルを再発見し、再発明してくれた」と述べており、今後もAIによってオラクルのソリューションを強化していく方針を示した。
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