パナソニックの次の柱は“畜産”!? 「水」でインドネシアに切り込む勝算製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

パナソニック 空質空調社は、インフラ整備が遅れるインドネシアで独自技術を軸に畜産分野へ本格参入した。現地の農業大学と行った実証実験では家畜の致死率改善と生産性向上を証明した。

» 2025年12月26日 07時00分 公開
[安藤照乃MONOist]

 パナソニック 空質空調社は、インドネシアにおいて水質浄化を起点とした畜産分野への本格参入を進めている。独自の水浄化技術により、家畜の生産性向上を目指す新たなビジネスモデルの構築に取り組む。成長著しいインドネシアの畜産市場に対し、今後どのような技術展開と支援を進めていくのか。現地での技術支援や教育を統括する、パナソニック・ゴーベル・インドネシア IAQ部門テクニカルアドバイザーの藤田浩史氏に話を聞いた。

インドネシアの4500万世帯が直面する水問題

 パナソニック・ゴーベル・インドネシアの藤田浩史氏 パナソニック・ゴーベル・インドネシアの藤田浩史氏

 インドネシアは2025年時点で約2.8億人の人口を有する世界有数の人口大国だ。しかし、巨大な人口規模に対し、インフラ整備の遅れは顕著である。現在、インドネシアでは人口の約7割に相当する約4500万世帯が、依然として生活用水を井戸水に依存しており、これが深刻な衛生問題を招いている。

 未整備の上水道では、井戸水に高濃度の鉄分が含まれることが常態化しており、洗濯物の変色や住宅の壁への着色、特有の臭気など日常生活に支障をきたしている。

 さらに深刻なのが、下水道だ。藤田氏は「下水道普及率は3%以下と極めて低く、未処理の排せつ物などが地中へと浸透し、それが水源である井戸水に混入することで大腸菌が検出されるケースが多発している」とインドネシア内の実情を語る。

インドネシアにおける生活用水の実情 インドネシアにおける生活用水の実情[クリックで拡大] 出所:パナソニック 空質空調社

住宅向けで2500台の施工実績

 パナソニック 空質空調社は、井戸水くみ上げポンプとして「パナソニック」と旧三洋電機の「サンヨー」の両ブランドを展開し、インドネシア国内で高いシェアを獲得している。2020年からは、独自技術で井戸水の鉄分を除去する「セントラル水浄化機器(WPS)」の展開を開始した。WPSの販売から設置、アフターサービスなどは、現地法人のパナソニック・ゴーベル・インドネシアが一気通貫で担う。

 セントラル水浄化機器(WPS)のコア技術 セントラル水浄化機器(WPS)のコア技術[クリックで拡大] 出所:パナソニック 空質空調社

 WPSは、日本のプールなどで使われる塩素剤によって、鉄分や細菌の除去/不活化を行うものだ。機器にタブレット状にした塩素剤をセットすると、下から上がってくる水がタブレットを溶かし、適切な濃度の塩素水として次のフィルターへと送る構造となっている。また、専門知識を持たないエンドユーザー自身でもフィルターの洗浄(逆洗)や薬剤の補充を容易にできるようにした。

 藤田氏は、「特に、都市化の進展に公共インフラの整備が追い付かないなどの新興国特有の構造的課題に対し、個別に導入できる点が他社にない優位性である」と、その独自性を強調する。

 同社は製品ラインアップの拡充も加速させており、2024年4月に鉄分除去能力を強化したWPSの新モデル(FP-15AM1)を市場に投入した。さらに同年8月には、水質を硬水から軟水へと変換する軟水機(FP-RS10V1C)を発売し、多様な水質課題への対応力を高めている。現在までに、住宅向けに累計約2500台の施工実績を積み上げてきた。

タンパク質中心の食生活へ変化するも品質に課題

 住宅向け事業で手応えを得た同社は、WPS技術の畜産(養鶏/酪農)分野への応用を加速させている。インドネシアでは近年の著しいGDP成長を背景に、国民の食生活が従来の炭水化物中心から肉、卵、乳製品などの動物性タンパク質を重視する方向へと変わりつつある。しかし、現地の生産現場では、鶏の致死率の高さや産卵率の低迷、生乳の細菌感染などが課題となっていた。

 これらの課題の要因として指摘されているのが、前述した劣悪な畜産用水の水質の悪さである。現地の畜産農家では、大腸菌や鉄分に汚染された井戸水をそのまま家畜に与えることが一般的で、これが個体の健康状態を損ない、生産性を停滞させている可能性があった。このような状況下で、本来は大規模な水浄化設備の導入が必要だが、プラント建設には莫大な初期投資が必要になる。農家の大半を占める中小規模の農家には、コスト面が高い導入障壁となっていた。

 畜産農家における水経由の感染拡大 畜産農家における水経由の感染拡大[クリックで拡大] 出所:パナソニック 空質空調社
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