中国メーカーがグローバル市場で大きな存在感を示すようになって久しい。急激な発展の要因の1つに、同国が国家レベルで整備を進める「製造デジタルプラットフォーム」の存在が挙げられる。本連載では事例を交えながら、製造デジタルプラットフォームを巡る現状を解説している。第4回は「中国のスペースX」と呼ばれる銀河航天(Galaxy Space)を取り上げる。
中国製造業でのデジタルプラットフォームの広がりを日本と比較しつつ紹介していく本連載。今回は「中国のスペースX」と呼ばれる銀河航天(Galaxy Space)を取り上げ、DX(デジタルトランスフォーメーション)の具体的な取り組みと成果について紹介する。
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中国の航空宇宙開発は、過去数十年にわたり「国家ミッション」の追求を原動力として成長してきた。宇宙産業には高い障壁、リスク、そしてコストが伴うため、あらゆる領域において「確実な成功」が最優先事項となっている。その結果、製品開発と試作サイクルは長期化し、設計の重複が頻発し、人件費と試験コストが高額になっている。この非営利志向のモデルは、商業航空宇宙産業の根底にある論理とは大きく異なる。
商業宇宙時代の到来とともに、航空宇宙産業は大きな転換を遂げ、あらゆる事業活動において「コスト」が最優先事項となった。2023年までに、中国の中核航空宇宙産業の規模は1兆9000億元(約43兆円)を超え、5年間の年平均成長率は4.93%に達している。予備的な推計では、中国の中核航空宇宙産業の市場規模は2024年までに2兆元(約45兆円)を超えたと予想されている。
同時に、商業宇宙市場を開拓するためには、宇宙船やロケットを手工芸品のような少数の特注品生産から、組立ラインで量産される工業製品へと進化させる必要がある。設計などの技術的要素に加えて、生産コストに影響を与える生産リソースの配分が重要なポイントとなる。全ての生産活動は「市場」と密接に連動させる必要がある。例えば、南東部沿岸地域は低緯度地域であるため、ロケットの打ち上げと回収に最適である。そのため、ロケットや衛星の研究開発、製造、組み立て、倉庫、物流は、コストを削減するためにも可能な限りこれらの地域の近くに設置する必要がある。
市場志向の生産リソース配分の観点から見ると、中国の商業宇宙産業は2つの大きな課題に直面している。1つ目は、産業資源の配置が不合理である点だ。例えば、ロケットと衛星の生産が主である長江デルタ地域には発射場が不足しており、多くの企業の研究開発拠点と製造拠点は遠く離れているため、連携が困難である。2つ目は、地域産業の発展が重複しているという点だ。例えば、山東省、河南省、四川省、湖北省などの地域は、いずれも政策立案において「衛星やロケット統合産業チェーンの構築」という目標を掲げているが、地域の実情に合わせた特色ある宇宙産業の育成には至っていない。
これらの問題の主な原因は、以下の3点があると考える。1点目は、産業の主要資源は依然として伝統的な航空宇宙企業によって支配されており、市場志向の開発が最優先事項となっていないことだ。2点目は、国内の商業宇宙分野の起業家は、依然として主に伝統的な航空宇宙企業や機関で活動している。研究開発は北京や西安といった内陸部に集中している一方、生産については製造や輸送システムが発達した東部沿岸地域に集中しており、ミスマッチが生じている。3点目は、産業集積は主に地方政府の計画によって推進されていることだ。地方政府は、政策支援や産業基金からの投資を通じて、資金力のある商業宇宙企業を多く誘っている。
この状況に対し、DXなどを通じて風穴を開ける存在となりつつあるのが、中国の「スペースX」と呼ばれている銀河航天(以下、Galaxy Space)である。
Galaxy Spaceは、2018年に設立された、中国で衛星打ち上げを手掛ける代表的な企業の1つで、同国の民間商業宇宙企業のリーダー的存在だとされている。衛星インターネットコンステレーションの構築を使命とし、「宇宙のためのインターネット」ではなく「宇宙から提供するインターネット」の実現を目指す。つまり全球規模で高速なブロードバンド通信サービスを衛星から提供することを目指している。設立以来、主に下記のような実績を挙げている。
Galaxy Spaceは、初のインターネット通信用の低軌道衛星の打ち上げに成功した。中国の民間航空宇宙企業がこの種の衛星を量産し、国家規模の主要打ち上げミッションを遂行するのは初めてのことだった。
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