「成長していないパナソニック」から脱却へ、楠見CEOが「MIF」で描く次の一手製造マネジメント インタビュー(1/2 ページ)

パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏は報道陣の合同取材に応じ、2026年5月12日に発表したグループ経営戦略に込めた考えについて説明した。

» 2026年05月22日 06時15分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD) グループCEOの楠見雄規氏は報道陣の合同取材に応じ、2026年5月12日に発表したグループ経営戦略に込めた考えについて説明した。本稿では、成長領域の1つとして挙げたソリューション領域の考え方についてまとめるとともに、主な質疑応答の内容を紹介する。

成長していないパナソニックグループから脱却へ

 パナソニックHDは2026年5月12日に、2026年3月期(2025年度)の決算を発表するとともに、2032年までを見据えた成長戦略を示した。その中で、「AIインフラと社会オペレーションを支える」をテーマに、AIインフラに関連する事業と、オペレーション効率化につながるソリューション事業を成長させる方向性を示している。

 楠見氏は成長戦略について「パナソニックグループは長く成長していない状況が続いていた。これを何としても再び成長軌道に乗せなければならない。2025年度は多くの方に会社を去っていただいたが、これは次の成長に向けたファーストステップだ。本当に成長へ舵を切っていくため、成長戦略を示した」と考えを述べている。

photo パナソニックHD グループCEOの楠見雄規氏

MIFを中心にソリューション領域を大きく拡大へ

 その成長領域として以前から挙がっているのが、顧客の課題解決のためグループ内のリソースを複合して提供するソリューション領域だ。今回はそのソリューション領域を推進する基本的な考えとして「MIF(Machines In the Field)」を中心に、新たなサービスやビジネスモデルを構築する考えを示した。MIFとは主に複合機市場などで以前から意識されてきた考え方で、市場に流通しているハードウェアの累積設置台数をベースに、サプライ製品やサービスなどを展開し、機器単体ではなくこれらを総合してビジネスを成立させるというものだ。

 パナソニックグループは、多くの製品分野で業界トップ3に入るシェアを持つ製品群を数多く抱えている。しかし、これらの多くは「ハードウェア売り切り」のビジネスモデルとなっており、シェアの高さを複合的なビジネス価値に転換することができていなかった。そこで、あらためて、MIFの概念をグループ内に浸透させ、ビジネスモデルの転換に取り組む。同時に、MIFとして普及する製品群をコネクテッド化し、コネクテッドサービスとして多岐にわたるサービスモデルの展開を進めていく方針だ。

photo MIFとして優位性を持つパナソニックグループの製品群[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 楠見氏は「これまでソリューション領域は寄せ集め感があったが、今回1つの軸として示すことができた。サービスやメンテナンスで売り上げを立てる割合はまだ小さいが、この3年でビジネスモデルを転換し、種まきをしておくことで、2029年以降に割合を大きく上げられると考えている」と述べる。

 楠見氏は、2025年1月の「CES 2025」のオープニングキーノートで「2035年までにAIを活用したハードウェアやソフトウェア、ソリューションによる事業の売上高を、パナソニックグループ全体の30%まで引き上げる」という宣言を行っているが、その目標値についても「AIインフラ領域を入れるともっと早く達成できるかもしれないが、当時の趣旨はソリューションをベースにAIを活用する領域を増やすということだった。この目標をぶらすつもりはない」と語る。

photo ソリューション領域の成長イメージ[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

準備期間で製品コネクテッド化とソリューション提案強化を推進

 ただ、ソリューション領域は以前から強化する方針であり、ショーケースや冷凍庫事業における遠隔監視や故障予知サービス、機内エンターテインメントシステムのトータル保守サービス、ビル管理システムにおける保守メンテナンスサービス、工場インフラ設計施工に関連する管理や保守サービスなど、既に多くのビジネスが実績を上げている。

 2026〜2029年を準備期間と位置付けたことに対し、楠見氏は「準備期間と設定することがよいかどうかは内部で議論があった部分だ。既にサービスとして展開している領域が多い点は確かだが、リカーリングの収益は一定規模まで普及するまでは増えていかない。(収益を上げられるようにするには)製品としてコネクテッド化されていない領域をコネクティブにする必要がある。加えて、ソリューションとして顧客に総合的に提案する力を付けていくことも必要だ。この2つを進めるためにあえてこの3年間を準備期間とした」と説明する。

 また、新たな取り組みとして、ソリューション領域での成長の期待が大きいパナソニック エレクトリックワークス、パナソニック HVAC & CC、パナソニック コネクトが一体となって、サービス展開や提案を進めていく方針を示す。「従来は、完全に3つが独立した動きになっていたが、顧客によっては窓口は1本化した方が良い場合もある。またサービスメンテナンスの収益性を上げようとすると、多能工化を進め3つの領域をまたいで対応できるようにした方が稼働効率は高まる。そうした課題を3つの事業会社で議論できる形になってきている」(楠見氏)。

photo ソリューション領域の例[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 パナソニックグループでは、モノ売りからコト売り(ソリューション提案)へ転換する方針については、過去に何度も推進しようとしたものの、なかなか進みが遅い状況があった。楠見氏は「本当の意味でのソリューションとは『顧客のビジネスにいかに貢献するか』で、転換するには根底から考え方を改める必要がある。SAPジャパンから鈴木洋史氏(2026年4月1日にパナソニック ホールディングス 執行役員 SRO、ソリューションパートナー担当に就任)を招いたのはソリューションビジネスの考え方を浸透させるためだ」と考えを述べている。

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