デジタルマーケティングを実践できている企業はそう多くない。本連載では「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていく。第29回は、生成AI時代における技術者の情報収集行動の変化を取り上げ、これからのデジタルマーケティングの在り方について考える。
生成AI(人工知能)の浸透により、デジタルマーケティングの前提が少しずつ変わり始めている。本連載は「製造業のための正しいデジタルマーケティング知識」を伝えていくことが狙いだが、第29回となる今回は、生成AIの浸透によって、技術者が情報収集の場面でどのような行動を取るようになっているのかを解説する。
現在、生成AIの普及によって、技術者の情報収集行動は静かに、しかし着実に変化しつつある。検索という行為そのものが消滅するわけではないが、その入り口はGoogle検索から「ChatGPT」のような生成AIへと移行しつつある。
こうした変化は、製造業のデジタルマーケティングにも影響を及ぼし始めている。従来のSEOに依存した情報設計だけではもはや不十分であり、生成AIに引用され、想起されるための工夫がこれまで以上に重要になってきている。
本稿では、最新の調査データと技術者の声を基に、情報探索の出発点が変わりゆく中で、企業がいかに対応すべきかを考えていく。なお、記事中で引用している調査レポートは以下のリンクからダウンロード可能だ。
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かつては「生成AIはハルシネーション(誤情報)のリスクがあるため使えない」と懸念していた技術者たちも、現在ではChatGPTを情報収集の手段として積極的に活用し始めている。
実際、テクノポートが2025年4月に実施したアンケート調査(研究者、製品開発者の情報収集方法におけるアンケート&インタビュー調査)によれば、24.9%の技術者が「自社の技術で解決できない課題が発生した際、ChatGPTなどの生成AIを使って調査した」と回答している。
展示会や論文といった伝統的な情報源と並び、ChatGPTが「問題解決のための調査手段の一つ」として活用されている状況が明らかとなった。
また、別途実施したインタビュー調査でも、この傾向が裏付けられている。例えば、自動車関連技術の研究者は次のように語っている。
ChatGPTをよく使っています。一般的な知識の調査はほとんどChatGPTに任せるようになりました。検索するより早いですし、複数の記事を読み比べる手間が省けるのがいいですね。
このように、ChatGPTは単なる「便利なお試しツール」ではなく、技術情報を調査するための選択肢の一つとして、現場で定着し始めている。もちろん、誤情報のリスクは依然として指摘されているが、それを踏まえた上での活用も進んでいる。例えば、「まずAIで全体像を把握し、その後にGoogle検索や論文で裏付けを取る」といった使い方が実際に行われている。
つまり、ChatGPTは検索エンジンを完全に代替する存在ではないにせよ、情報探索の“入り口”として一定の役割を担い始めている。
「代替になり得るか?」という問いに対しては、「既に、ある領域では代替となりつつある」といえる段階にある。
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