AIが同僚に? マイクロソフトが産業用AIエージェントで示す新たなモノづくりハノーバーメッセ2025(1/3 ページ)

Microsoft(マイクロソフト)は世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ(HANNOVER MESSE) 2025」において、ローコード/ノーコードで作れる産業用AIエージェントをはじめとしたAIソリューションを公開。AIの“同僚”によって効率化される製造業界の姿を提示した。

» 2025年06月16日 08時00分 公開
[永山準MONOist]

 「AIはテスト段階を終え、産業界で広く活用されている。われわれはデータを活用し、次の主要なAIテーマ『AIエージェント』に早急に注力すべきだ」――。Microsoft(マイクロソフト)は世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ(HANNOVER MESSE) 2025」において、ローコード/ノーコードで作れる産業用AIエージェントをはじめとしたAIソリューションおよび、AI活用に不可欠なITとOTの連携ソリューションなどを公開。AIの“同僚”によって効率化される製造業界の姿を提示した。

「既にほぼ半数が業務に」着実に進む製造業でのAI利用

 近年、製造業における生成AI活用はハノーバーメッセの中心的なテーマの1つとなっている。契機となったのはChatGPTの登場で、登場直後である2023年には実験的なツールの展示が並んでいる状況だったが、その技術は急速な進化を続け、製造業における具体的な課題解決に向けた実用的ソリューションが続々と登場している。

 AIのビジネスへの導入も着実に進んでいる。ドイツの調査会社Techconsultが実施した調査では、ドイツ産業界のほぼ半数(45%)はテスト段階を終え、既にビジネスプロセスの一部でAIを活用していることが分かったという。

 また、調査では61%が自社のデータ資産を管理された方法でAIに利用可能にすることを望んでいて、53%はそうしたデータが国際競争において優位に立つと考えているとも判明。これに対しマイクロソフトのドイツ法人でマネージングディレクターを務めるアグネス・ヘフトベルガー氏は「AIはテストや実験の段階を脱し、今や産業界で大規模に利用されている。われわれはAIのためにデータ資産を活用し、そして次の主要なAIテーマ『AIエージェント』に早急に注力すべきだ」と強調している。

ローコードで作れる産業向けAIエージェント

 今回のハノーバーメッセにおいて、マイクロソフトはローコード/ノーコードでAIエージェント作ることができるツール「Copilot Studio」および、製造業用のテンプレートとして「Factory Operations Agent」と「Factory Safety Agent」をアピール。産業界の企業がより効率的、生産的、革新的に業務を遂行する方法を提示していた。

 マイクロソフトはこれまで個々のツールやアプリケーションに対話型AIを搭載する形で「Copilot」を展開してきた。今後のAIエージェントが加わった世界観では、人間と直接対話し回答するUI(ユーザーインタフェース)をCopilotとし、そのCopilotの後ろで、生産管理や在庫管理、レギュレーション担当などそれぞれ専門性を持ったAIエージェントが控えているようなイメージで、ユーザーのサポートが行われる形になるという。

 Factory Safety Agentは、製造業の従業員に職場の安全衛生ガイドラインに関する回答などを提供。また、安全検査を簡素化し、従業員の安全トレーニングをパーソナライズする機能を実現するものだ。説明担当者は「例えば、自社のドキュメントや過去のトラブルデータなどを読み込ませれば、何を点検すべきかを判断し点検項目を作成できる。さらに点検のチェックのサポートなども実行できる」としている。

 Factory Operations Agentはユーザーからの自然言語による対話によって、例えば設備の稼働率などのデータに関して回答/分析を行い、生産プロセスを最適化することを可能にするもの。いずれも顧客がローコード/ノーコードで最適なAIエージェントを作りやすくするひな型で、「数クリックするだけでタスクをカスタマイズ可能」という。既にパブリックプレビューで利用可能だ。

 また、説明担当者は「データの重要性が改めて注目されている。製造業では工場や製品を収めた顧客先など、とにかく現場のデータをどうやってクラウド側と連携していくかが課題となっている。OTとITの連携、そしてスレッドという観点でいえば、そこにさらにエンジニアリングデータが入ってくるが、これら全ての連携は実際にやろうとすると難しい」と説明した。

 現場のデータは、装置や制御メーカーごとに形式が違ったり、モノによっては特に意味付けがなく、タイムスタンプやセンサーID、数値が並び、一目では分からないこともある。説明担当者は「これらをどのように意味付けて、AIエージェントが人間との対話の中で答えられるデータとして、組み上げられるかが肝心だ」と述べ、そのためのツール群について、具体例となるデモを示しながら説明した。

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