「マンチャート分析」と「マンマシンチャート分析」で生産性をさらに高める現場改善を定量化する分析手法とは(16)(1/3 ページ)

工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第16回では、前回に引き続き「連合作業分析」から、「マンチャート分析」と「マンマシンチャート分析」を紹介する。

» 2025年11月26日 06時00分 公開

 前回に引き続き「連合作業分析」について説明をしたいと思います。

 前回は、1人の作業者が複数の工程や機械設備を連続して担当する生産方式により、生産効率を高める場合の分析手法である「多工程持ち分析」、1人で何台の機械設備を担当して作業が可能であるかを分析する「機械設備の多数台持ち分析」、複数工程の組み立てや加工などで、各作業者あるいは機械設備間の時間的負荷のアンバランスを分析する「バランスロス分析」という3つの分析手法について紹介しました。

⇒連載「現場改善を定量化する分析手法とは」バックナンバー

 今回は、複数の作業者が共同で行う連合作業を分析する「マンチャート分析(組作業分析)」と、作業者と複数台の機械設備による連合作業を分析する「マンマシンチャート分析」について説明します。

 これらの分析手法は、複数の作業者によるチーム作業や、作業者と機械設備の組み合わせ作業を対象に、見つけにくい無駄をデータとして視覚的にチャート化して、それらの関連性を顕在化させます。そこから、1個を生産するのに要する平均時間の「サイクルタイム」や「配置人員」の削減に結び付けることに意義があります。

 多くの企業が随所に連合作業を取り入れていますが、その生産性に疑問を抱いている現状があります。どのように分析して生産性を高めていけばよいのか、例えば作業者を1人増やすと生産性はどのような結果を招くのか、といった経営者や現場管理者の悩みを解決するのにマンチャート分析とマンマシンチャート分析は大いに役立つでしょう。

1.連合作業分析(Gang Process Chart Analysis/Multiple Activity Chart Analysis)

 先述した通り、連合作業分析(複式活動分析)には2つの手法があります。1つは、数人の作業者が共同して1個の仕事を遂行するとき、相互関連の状態を分析して記録する「マンチャート分析」です。もう1つは、作業者と工程順に配置された複数の機械設備の稼働状態と作業者の作業手順との時間的関係を図表化することにより、それぞれの停止時間(遊び時間)を調査し、時間的な組み合わせを改善する「マンマシンチャート分析」です。

 ひと言でいえば、2人以上の作業者が協同して作業を行うときに、その協同作業の作業者間や複数の機械設備と作業者間の組み合わせ作業などの効率を高めるための分析手法です。作業者の配置人員の削減や機械設備の稼働率向上、サイクルタイム(CT:Cycle Time)の短縮などを主な目的とします。

 作業分析では、作業状況として「作業者の単独作業(設備や他の作業者とは独立して行われる作業)」「稼働していない状態(手待ちや機械の停止など、作業が行われていない状態)」「連合作業(人と人、または人と機械が共同で行う作業)」という3つの性質に区分してチャートに表した上で、作業の時間的ロスや改善点を見つけ出します。

 これらの作業分析のうち、連合作業分析では、主に以下の2種類のチャートが用いられます。この分析を通じて、現状の問題点や改善点を見える化し、作業者や機械設備の不稼働時間を削減することで配置人員の適正化や機械設備自体の改善、レイアウト変更などを行って生産性向上を目指します。

(1)マンチャート分析(組作業分析)

 複数の作業者が共同で行う連合作業を分析する場合に適しており、作業者全員の作業内容と所要時間を時系列で並べることで、作業量のばらつきや手待ち時間がないかを分析します。

(2)マンマシンチャート分析(M−Mチャート分析、人−機械作業分析)

 作業者と機械設備の連合作業を分析する場合に適しており、作業者と機械設備の作業状況を時系列で明確にし、それぞれの手待ち時間とその原因を明らかにして双方の最適な作業の組み合わせを再設計します。

2.マンチャート分析(組作業分析:Man Chart Analysis)

 作業者の手作業の内容を時間の流れに従って分析し、タイムチャート上に表示する分析手法です。「マンマシンチャート」「段取作業の分析」などの手法と類似しています。特に2人以上の組作業の分析に効果的です。

 用途としては、作業効率の向上、ST(標準時間:Standard Time)の設定、小集団活動のテーマ解決、組作業における編成効率の向上などに多く活用されます。

2.1 マンチャートの作成手順

  1. 対象作業の手順を要素作業レベルで分類して記述する
  2. 要素作業ごとの作業時間値をストップウォッチで測定する
  3. タイムチャートに要素作業と時間値を記入する

2.2 マンチャートの例

図1 図1 2人組による段取り作業のマンチャート分析の事例[クリックで拡大]

2.3 マンチャート作成の留意点

  1. タイムチャートは、方眼紙を使用すると目盛りが読みやすい
  2. タイムチャートは、要素作業ごとに、その時間値を記入すると分析がやりやすい
  3. タイムチヤートの目盛りはなるべく大きくした方が見やすい
  4. 複数人の組作業の場合は、必ず各人の作業の始めと終わりを一致させること
  5. 時間値の単位は、作業の大きさにより秒、分、時間を使い分ける

2.4 マンチャートの種類

  1. 就業時間レベル:1日の作業発生順序の分析
  2. 要素作業レベル:単一の要素作業レベルの分析
  3. 要素動作レベル:右手/左手、歩行などの作業動作レベルの分析
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