1人で複数の工程や機械設備を担当して生産性を上げる「連合作業分析」の効果現場改善を定量化する分析手法とは(15)(1/3 ページ)

工場の現場改善を定量化する科学的アプローチを可能にする手法を学習する本連載。第15回では、さらなる生産能力の向上を目指す手段として広く採用されている「連合作業分析」のうち、1人の作業者が複数の工程や機械設備を担当することで生産性を上げるのに用いられる3つの分析法を紹介します。

» 2025年09月24日 06時00分 公開

 今回と次回は、個別の工程改善から一歩先に進めて、さらなる生産能力の向上を目指す手段として広く採用されている「連合作業分析」について説明をしたいと思います。連合作業分析は、1人または複数の作業者と、複数の工程や機械設備を組み合わせる、いわゆる「連合作業」によって効率的な方法を見つけ出す分析法のことをいいます。

 今回は、1人の作業者が複数の工程や機械設備を担当することで生産性を上げるのに用いられる3つの分析法を紹介します。

⇒連載「現場改善を定量化する分析手法とは」バックナンバー

1.多工程持ち分析(Multi-process Handling Analysis)

 「多工程持ち分析」は、1人の作業者がどれほどの工程数を担当して同時に作業が可能かを分析する手法です。つまり、多工程持ち分析は、製造現場や業務プロセスにおいて、1人の作業者が複数の工程を担当する「多工程持ち」作業の効率や課題を明らかにするための分析手法になります。

1.1 多工程持ち分析とは

 多工程持ち分析は、1人の作業者が複数の工程を連続して担当する生産形態の生産性を分析する手法のことです。目的としては、工程間の待ち時間の削減、作業の流れのスムーズ化、多能工化による柔軟な人員配置、リードタイムの短縮などが挙げられます。例えば、組立作業で、1人が「部品取り付け⇒ネジ締め⇒電気配線」までを一貫して行うなどです。

 ひとまとまりの仕事に関わる作業を工程順に並べるライン構成を行い、未作業品から作業完了に至るまで、1人の作業者がその流れに沿って1個ずつ作る生産方法で、「縦持ち」ともいいます。「1個流し」を基本とすることで、全体の流れを管理することができます。

 ここで1個流しについて少し説明をしておきたいと思います。ロットにまとめて流す生産方式を「ロット生産」あるいは「ダンゴ生産」といいます。例えば、1ロットが10個の場合は、A工程で10個造ったら、その作業済み品10個をまとめて次工程のB工程に流します。同じくB工程で10個の作業を行った後、10個まとめて次工程のC工程に流すという作業方法です。常に10個がかたまりになってラインを流れます。

 これに対して1個流しは、A工程で1個の作業が完了したら即座にB工程へ渡します。1個造ったら次工程に手渡しするという作業方式です。

1.2 多工程持ち生産の狙い

 多工程持ち生産のメリットとしては、工程間のムダ削減による生産性向上に加え、作業者の教育や作業訓練を必要とするものの多能工の育成によるフレキシブルな対応力の向上、一貫作業による品質の安定化などが主な効果として挙げられます。

 生産ラインの改善を行う際は、作業者ごとのスキルマップ(力量評価表:Skill Map)により工程ごとの編成を行います。次に、工程編成後の工程配置を見直して、移動距離をできるだけ短縮するように検討します。併せて、からくり改善や作業の自働化、作業補助具などによって作業負荷を軽減するように工夫します。

1.3 多工程持ちの分析における留意点

 まず、改善対象とする工程の作業内容を数値化する必要があります。例えば、工程ごとの所要時間やそれらに伴う段取りの時間、人の移動時間などを計測して記録していきます。その際、動画解析の活用や、作業のタイムチャートを作成するなどの方法も効果的です。

 次に、どの範囲の工程を1人の作業者に集約すると効率的かを検討します。あらためて、作業者のスキルや工程ごとの作業負荷などを確認して作業ラインを編成していきます。

 最終確認として、手待ち時間や移動時間、付随作業時間などの価値を生まない無駄作業の時間を計測して、無駄な動作や作業を排除する改善を加えていきます。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.