1人で複数の工程や機械設備を担当して生産性を上げる「連合作業分析」の効果現場改善を定量化する分析手法とは(15)(2/3 ページ)

» 2025年09月24日 06時00分 公開

2.機械設備の多数台持ち分析(Multi-machine Handling Analysis)

 「機械設備の多数台持ち分析」とは、1人の作業者が複数の機械設備の操作を同時に行う「多数台持ち」作業において、効率や生産性を分析して改善する手法です。

 機械設備の多数台持ち分析では、1人で何台の機械設備を担当して作業できるかを分析します。この分析手法を用いる場合、「マンマシンチャート(Man-Machine Chart)」の活用が必要条件になります。マンマシンチャートは、複数の作業者および機械設備の組み合わせ(連合)において、時間的な側面から効率の良い方法を見つけ出すための分析図のことを指します。

 この分析手法の実施によって得られる効果は、作業効率の向上、機械設備効率の向上、リードタイム(Lead Time:工程や作業の開始から終了までの所要時間や期間)の短縮などが挙げられます。

2.1 機械設備の多数台持ち分析とは

 機械設備の多数台持ちでは1人の作業者が複数の機械設備を操作します。その目的は、機械設備や作業者の待機時間を減らし、稼働率を最大化することにあります。例えば、フライス盤を3台持ちして、加工中の1台の加工完了を待つ間に他の2台を操作するなどです。

 なお、1人の作業者が同一機能の機械設備を複数台使用して、同一加工を大量に行う生産方法は「横持ち」といいます。 単能工で対応できるため、作業の習熟が早いというメリットがあります。

2.2 機械設備の多数台持ち分析の狙い

 多くの自動加工の機械設備は、一部の作業に作業者による操作を必要としますが、機械設備の自動加工時間中は作業者の手待ち時間になります。この手待ち時間をゼロにするため、他の機械設備の自動加工設備も担当したとしましょう。しかし、手待ち時間がゼロになっても、機械設備が作業者を待つ時間が発生して機械設備の稼働率が低下しては改善の意味がありません。

 「人と機械設備の手待ち時間ゼロ」こそが、機械設備の多数台持ちを目指す真の狙いです。その結果として、機械設備の稼働率の向上による生産性向上と、少人数による機械設備の多数台持ちが可能となるというメリットが生まれます。

2.3 機械設備の多数台持ちの分析における留意点

 各機械設備の加工時間や段取り時間、人の移動時間などを明確にして、作業者が複数台の機械設備を扱って作業をおこなう場合の実作業時間を算出します。バーコードや動画解析などを使って作業時間を収集する方法も効果的です。

 作業者のスキルを考慮しながら適切な作業者を配置していきます。また、作業動画やセンサーなどを活用して、ボトルネック工程を監視しておく必要があります。ボトルネック工程は常に存在し、移動するものと認識しておかなければなりません。作業者の人数や工程数を変更した場合のシミュレーションを行って、作業者や機械設備の最適な配置を検討することも重要です。

2.4 機械設備の多数台持ちの分析手順(例)

 作業者が複数台の機械設備の操作を担当する台数の可能性を分析する手順は以下の通りです。先述した多工程持ち分析も同様の手順になっています。

  • (1)機械設備1台(A)のマンマシンチャートを作成し、人の介在時間と人の手待ち時間を求めます
  • (2)新たに、作業者へ追加で担当させたい機械設備(B)のマンマシンチャートを作成し、人の手扱い時間を求めます
  • (3)新規追加の機械設備(B)の人の手扱い時間が担当していた機械設備(A)の手待ち時間内なら、(B)の機械設備も担当することができます
  • (4)(A)(B)の2台の設備の操作を担当した場合のマンマシンチャートを作成します。マンマシンチャートは、必ず1サイクルが完了するまで作成し、1台目の機械設備に遅延なく戻れるかを検討します
  • (5)作成したマンマシンチャートにおける機械干渉時間(機械設備が停止してから作業者の手作業の開始までの時間)と、人間干渉時間(機械設備が加工を終了するまで、人が待っている時間)を最小にする人と機械設備の組み合わせにします。マンマシンチャートを用いて、機械干渉時間と人間干渉時間を最小化し、待ち時間を最小化することが重要です。
  • (6)機械設備の多数台持ちや多工程持ちは、1人N台あるいはN工程持ちの他にも、例えば2人で5台持ちのような、「人と機械設備の手待ち時間ゼロ」を指向したN人でM台持ちの可能性を検討します。詳細は次回説明します

2.5 機械設備の多数台持ち分析の単純な事例

 単機能の機械設備について、作業者の手扱い時間が部品供給のみで加工が自働化されている場合、持ち台数1台と6台をマンマシンチャートで分析すると図1図2のようになります。

図1 図1 1人で機械設備1台持ちのマンマシンチャート
図2 図2 1人で機械設備6台持ちのマンマシンチャート[クリックで拡大]

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