日立製作所は、2024年度連結業績と2025〜2027年度の中期経営計画「Inspire 2027」について説明。新中計となる「Inspire 2027」の財務KPIでは、売上高の年平均成長率は2024中計と同等の7〜9%を維持しつつ、Adjusted EBITA率で13〜15%を目指す。
日立製作所(以下、日立)は2025年4月28日、オンラインで会見を開き、2024年度(2025年3月期)連結業績と2025〜2027年度の中期経営計画「Inspire 2027」について説明した。前中計である「2024中期経営計画(2024中計)」の最終年度に当たる2024年度の連結業績は、売上高が前年度比14%増の9兆7833億円、利益指標であるAdjusted EBITA率が同1.7ポイント増の11.7%、当期利益が同4%増の6157億円、コアFCF(フリーキャッシュフロー)が同36%増の7806億円と増収増益となり、2024中計の財務KPI(重要業績評価指標)をほぼ達成した。
新中計となるInspire 2027の財務KPIについては、売上高の年平均成長率は2024中計と同等の7〜9%を維持しつつ、Adjusted EBITA率は13〜15%に、新たにKPIに設定したキャッシュフローコンバージョン(コアFCF/当期利益)を2024年度の83%から90%に高めつつ、ROIC(投下資本利益率)を同10.9%から12〜13%、成長と収益性向上のエンジンに位置付けるLumada事業の売上高比率/Adjusted EBITA率を同31%/15%から50%/18%に高める方針を示した。
日立 代表執行役 執行役社長 兼 CEOの徳(正しい漢字は右側の心の上側に「一」が入る)永俊昭氏は「日立の強みはテクノロジーとドメインナレッジを統合して社会インフラをトランスフォームできること、そして分断が加速する世界においても地域ごとの課題に寄り添える自律分散的な事業構造を持っていることだと考えている。Inspire 2027では、不透明な現在の事業環境を踏まえて、従来以上にキャッシュフローの強化、キャピタルアロケーションの最適化、ポートフォリオの改革に取り組む。その上で、日立の強みをフルに発揮し、企業価値のさらなる向上を目指す」と語る。
また、2027年度までの3カ年の中計であるInspire 2027の重要KPIに加えて、「日立をデジタルセントリック企業に変革するゆるぎない決意を示すため」(徳永氏)に、Lumada事業の売上高比率80%/Adjusted EBITA率20%を目指す「LUMADA 80-20」を新たな経営の長期目標として設定した。
前中計である2024中計の財務KPIは、売上成長(3年間の年平均)、Adjusted EBITA率、ROIC、EPS(1株当たり純利益)成長率(3年間の年平均)、コアFCF(3年累計)の5項目で、Adjusted EBITA率が若干の未達となったもののそれ以外は達成した。徳永氏は「目標としたオーガニック成長へのモードチェンジを実現し、企業価値も大きく向上した。特に、キャッシュフローとROICを重視する経営が定着してきた確かな手応えを感じている」と振り返る。また、10年以上にわたって進めてきたグローバル自律分散型経営が進展しており、日立グループ全体での現地調達率が82%に達するなど地政学的リスクへの耐性も高まりつつある。
2024中計を受けたInspire 2027の目指す姿としては「環境・幸福・経済成長が調和するハーモナイズドソサエティの実現に貢献し、持続的に成長する」を設定した。その鍵となるのが、徳永氏が新社長就任会見でも言及した「真のOne Hitachi」だ。デジタルソリューション群であるLumadaに代表されるデジタルをコアに、各事業の強みを掛け合わせ日立ならではの価値を創出し持続的な成長を目指す。その結果として実現されるのが“ハーモナイズドソサエティ”というわけだ。
Inspire 2027の推進体制では、エナジー、モビリティ、コネクティブインダストリーズ(CI)、デジタルシステム&サービス(DSS)の主力4事業を、米州、EMEA(欧州、中東、アフリカ)、APAC(アジア太平洋)、インド、日本、中国のグローバル6極で展開する。また、CEOである徳永氏の直下に新設した戦略SIB(Social Innovation Business)がOne Hitachiの新たな成長事業の創出を担う。
キャッシュフローは2024中計から引き続き強化する。特に、非Lumada事業やマイノリティシェア事業などを対象とする事業ポートフォリオ改革を着実に実行する。徳永氏は「LUMADA 80-20を推進する上でも事業ポートフォリオ改革は不可欠だ。成長性、収益性向上の見込めない事業、言い換えれば非Lumada事業については着実に対応を進める」と述べる。キャピタルアロケーションでは、財務規律を重視しながら、成長投資としてLumada事業と関わる戦略SIBや産業オートメーションの強化を進める方針を示した。
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