Inspire 2027の成長戦略で核となるのがLumada事業である。徳永氏は「2016年のローンチ当初のLumada(Lumada 1.0)は、IoT(モノのインターネット)プラットフォームとして顧客の業務をデータドリブンで進化させてきた。2024中計では、GlobalLogicの買収によって日立のデジタルエンジニアリングが大きく強化されLumada 2.0にレベルアップし、顧客のバリューチェーン全体をデジタル活用で進化させられるようになっている。そしてInspire 2027では、日立のドメインナレッジで強化したAI(人工知能)によりLumada 3.0に進化する」と強調する。
2024中計ではLumada事業について、コンサルや顧客協創などソリューションの企画段階に当たる「デジタルエンジニアリング」、企画したソリューションをシステムとして構築する「システムインテグレーション」、デジタルサービスの基盤となる機器や設備の「コネクテッドプロダクト」、ソリューションの運用や保守で用いられるクラウド型サービスなどの「マネージドサービス」の4つに区分していた。Inspire 2027では、Lumada 3.0への進化に併せて事業内容の明確化とシンプル化を図る。これまで下側に位置していたコネクテッドプロダクトとシステムインテグレーションを「デジタライズドアセット」に、上側にあったマネージドサービスとデジタルエンジニアリングを「デジタルサービス」に統合する。
このLumada事業の定義変更により、エネルギーや鉄道、産業などのインストールベースがデータを生み出す源泉であるとともに価値を生み出す資産であることを明確にする。そして、ドメインナレッジとAIによる強化で収集したデータを価値に変換するデジタルサービスをさらに強化していく。この新たな定義では、2024年度のLumada事業の売上高は3兆円、売上高比率は31%、Adjusted EBITA率は15%となるが、2025年度の連結業績では、売上高が前年度比30%増の3兆9000億円、売上高比率が38%、Adjusted EBITA率が16%に伸長する見込みだ。
徳永氏がLumada 3.0の好事例として挙げたのが、モビリティセクターが手掛ける「HMAX」だ。鉄道のドメインナレッジとAIを掛け合わせ、車両/鉄道インフラの資産効率を向上する。HMAXは既に世界の約8000の車両に適用されており、保守コストの15%低減、列車遅延の20%削減などの効果を挙げているという。
Lumada 3.0では、鉄道向けに開発したHMAXの実績を基に、エナジーセクター向けの「HMAX for Energy」やCIセクター向けの「HMAX for Industry」への展開も計画している。さらにモビリティセクターでは、自社のインストールベースにとどまらず他社のインストールベースへのHMAXの展開も目指す。実際に、鉄道向けでは欧州市場で他社への適用が進んでいるという。
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