メディア

ニデック工作機械会社トップたちは牧野フライスTOBで何を語ったか製造マネジメントニュース(3/4 ページ)

» 2025年04月07日 07時00分 公開
[長沢正博MONOist]

合理的で公正な手法 ニデック 専務執行役員 最高M&A責任者 荒木隆光氏

ニデックの荒木隆光氏 ニデックの荒木隆光氏

 われわれは対面でのミーティングを継続的にお願いしたが、特別委員会および一部の取締役と(2回とも)それぞれ1時間のやりとりにとどまった。質疑も重複している部分があり、対話という点では非常に限られたのが残念だった。過去のM&Aに対してネガティブなコメントもあり、実質的な対話のためのQ&Aがなかったと感じている。

 事前同意なき、さらには事前協議なきTOBといわれ、そこに焦点が当たってしまっているが、ステークホルダーにとって透明性を確保し、公正な手法であると思っている。

 従来型のアプローチであれば、出資や買収をしたいという提案をしても、恐らくすぐにイエスと言っていただけなかっただろう。合意いただくまでに長い年月がかかってしまう場合もある。そうった提案が闇に葬られることがないように、公開で買収提案することで、株主の皆さまの機会損失をなくすことが最大の目的だ。

 日本では珍しいといわれるが、極めて合理的で公正な手法だ。日本の産業競争力を付けていくために、M&Aの促進は不可欠だ。産業再編を加速させ、個々の企業が強くなることで、国際競争力を高めていくという目的にも資する。

ニデック傘下の工作機械メーカーのトップが会見に臨んだ ニデック傘下の工作機械メーカーのトップが会見に臨んだ

 (完全子会社化に向けた)初期的な提案を受けられているということだが、本来は、法的拘束力がなくても、具体的な金額や付帯条件などを開示すべきだと思う。現在に至ってまだ開示されていない状況であり、われわれは比較する必要なく、現段階において、われわれしか提案されていないということであれば予定通り行う。

 協議の時間が十分にない中で、いわゆる有事買収防衛策の導入を予告された。極めて遺憾であり、“超劇薬”である。もし対抗策導入の要望後、われわれがTOBを撤退した場合、株価は元の価格に戻っていき、株主はわれわれの提案価格で売却できた機会を失ってしまう。株主にとって大変な損失になる可能性がある。ポイズピルは百害あって一利なしだ。

 海外の買収者が日本の国益を損なうような買収を仕掛けてきたような限られた場合に、行使する合理的な理由があるかもしれないが、われわれは製造業の事業会社であって、互いのシナジーを明確に説明している中で、明確な理由もなく、条件を満たさなかった場合、新株予約権を発行して希釈化し、ニデックを排除するという、明らかなポイズンピルだ。

 経済産業省のガイドラインに真っ向から対立するものであり、仮に発動され、そのつもりはないが、われわれが撤退するとなった場合、日本のM&A市場の発展は10~20年遅れ、国益の損失につながる。資本市場の発展を阻害する。取締役会のメンバーの皆さまが、これほどの劇薬の導入を賛成されたのか分からないが、理解に苦しむ。反対された方もいるのではないかと信じたい。

 まだ、(対抗策の導入は)予告にとどまっている。仮に、対抗策の発動が決議され、実行された場合、当社の損失は大きくなる可能性がある。そうなれば、必要な手段を取っていく。

 買い付け価格は必要かつ十分であり、現時点で変えるつもりはない。さまざまな条件が変われば、また考えるが、今は変更する環境にはない。他の提案が出てきたときに、そちらが上げたら、こちらも上げて、というような、値上げ競争は無利益で無用だ。M&Aを目的化して必ず買収しようとは考えていない。あくまで手段だ。そういう競争には絶対に入らない。

 (牧野フライスは)まだ、拒否するという明確な意思表明はされていない。これからも提案を受け入れていただけるよう努力を続ける。面談を重ねて相互理解を図り、より互いに理解し合って、提案を受け入れていただきたいと切に願っている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.