ニデック工作機械会社トップたちは牧野フライスTOBで何を語ったか製造マネジメントニュース(2/4 ページ)

» 2025年04月07日 07時00分 公開
[長沢正博MONOist]

長年の課題即座に解決 ニデックマシンツール 代表取締役社長 二井谷春彦氏

ニデックマシンツールの二井谷春彦氏。ニデックオーケーケーの代表取締役社長も兼務する ニデックマシンツールの二井谷春彦氏。ニデックオーケーケーの代表取締役社長も兼務する

 もともと三菱重工業傘下の工作機械メーカーだった。ご想像の通り、三菱重工業とニデックは全く社風が違う。いろんな人から「大丈夫か」と言われた。

 三菱重工業は防衛、エネルギー、航空宇宙などの重工業が事業領域で長いスパンで物事を見る。一方で、ニデックはスピード経営だ。全く違う。

 ニデックグループ入りする前、われわれは2つの長年の課題があった。1つは、海外、特に中国での売り上げが伸びず、競合に対して後れを取っていた。もう1つは、20年来、設備投資をしてこなかった。人員補強も十分ではなかった。従業員の間では、将来に対して閉塞(へいそく)感が漂っていた。

 ニデックグループ入り後に、この2つの課題は非常にスピーディーに解決された。

 ニデックの海外営業は非常に強い。工作機械事業本部の営業部隊の必死の支援があり、中国における市場開拓が急速に進んだ。この3年間で中国の売り上げが2倍になった。シェアが上がり、勢いがついた。

 設備投資についても、ニデックグループ入りしたその日から、工場の裏にあった山を切り崩して、造成をスタートさせた。2025年11月には、敷地内に新しいテクニカルセンターがオープンする。2024年10月には、中国に新たな工場を稼働させることができた。

 なぜ、長年できなかった2つの課題解決をスピーディーにできたのか。ニデックグループ入り後、すぐに永守が来て、その場で“土地の造成を始める。中国にも工場を作る”と指示を出した。この経営のスピード感がニデックの特徴だ。

 今、世界情勢や産業構造が急速に変化している。グローバルで展開している企業には、課題解決のスピード感が求められる。ニデックのスピード経営の文化が、今の経営環境にマッチしている。

 三菱重工の文化からニデックの文化になり、当初は、そのスピード感に付いていくのは非常に大変だった。経営幹部だけでなく、従業員に苦労を掛けたこともある。ただ、先日も工場を回ったが、社員が一生懸命、品質がいい機械を短納期で届けようと努力している。

 “ニデックグループ入りすると品質が落ちる、サービスが悪くなる”という風評も聞くが、彼らの姿を見ていると、そういった風評は遺憾だ。この100年間、品質のいい機械をなるべく早く届けよう、ということだけを考えてきた。品質とサービスをないがしろにして生き残っていこうとは、全く考えたことはない。

 ニデックグループ内には、海外の工作機械メーカーもある。グループ入りする前から無借金経営の優良企業ばかりだ。これらの会社がその後、どうなったのか。グループ入り後、さらに経営のスピード感がアップして、グループの資金力を背景にした設備投資も進み、垣根を超えたグループのシナジーを発揮して業績が伸びている。

 彼らとは仲もよく、年数回、食事して工場を互いに見せ合い、いいところを学び合う活動している。

 われわれはかつて、同じグループに三菱自動車もあったが、トヨタ自動車にも機械を納めていたし、グローバルに販売していた。その機械に競争力があれば、品質のいい機械を、早く、安く作ることができれば、例え同じグループの中に競合企業があったとしても、顧客に購入していただける実績があるし、自信も持っている。牧野フライスの方も、一切心配する必要はない。それくらい、彼らはいい機械を作っている。

 景気減速の影響で社員の報酬が減ったり、部門間/拠点間や従業員/経営陣との壁ができてコミュニケーションが不足し、経営の意思決定が遅くなったりするというのは、工作機械メーカーに起こりがちな現象だ。われわれも以前は、そういったことに悩んでいた。

 従業員にとって一番大切なのは、安定した経営だ。ニデックの経営というのは、従業員の皆に苦労をさせるためのものではない。経営体質を強化して持続的に成長させていくためのものだ。牧野フライス製作所と一緒になって、より成長していきたいと考えている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.