DMG森精機は同社の第2本社に当たる奈良商品開発センタ内に開所したAMイノベーションセンタをメディアに公開した。同社は、AM事業を強化するため新会社のDMG森精機Additiveも設立している。
DMG森精機は2025年4月14日、同社の第2本社に当たる奈良商品開発センタ(奈良県奈良市)内に開所したAMイノベーションセンタをメディアに公開した。同社は、AM(Additive Manufacturing、積層造形)事業を強化するため、同月1日付で新会社のDMG森精機Additiveも設立している。
DMG森精機Additive SLM開発グループ グループ長の大多和毅氏は「われわれのAMの技術が成熟してきた。機械の能力も上がり、量産レベルで活用できることが見えてきた。事業化するめどが立ってきたため、分社化して利益をあげていくのが狙いだ」と意気込む。
DMG森精機では、レーザーを照射しながら金属粉末を吐出して溶融させ造形するDED(Directed Energy Deposition、指向性エネルギー堆積法)や、敷き詰めた金属粉末にレーザーを照射して溶融させ、一層ずつ造形していくSLM(Selective Laser Melting、選択的レーザー溶融法)方式のAMを行う製品を開発、製造している。
2022年には伊賀グローバルソリューションセンタ、東京グローバルソリューションセンタ内に「AM lab & Fab」を開設し、自社製品を活用して、ユーザーの金属積層造形(Additive Manufacturing、AM)の活用をサポートする受託加工サービスを展開してきた。
これまでの受託加工の件数は年間十数件というが、DMG森精機Additive AM技術営業グループ グループ長の萩森紗季氏は「われわれは設備も提案しており、受託加工を主とするのではなく、問い合わせいただいた案件などを既存ユーザーに紹介し、よりAMの市場を広げていく窓口のような役割を担っている。あくまでも、われわれが持つ技術を、既存ユーザーやAMの活用を考えているユーザーにシェアしていく側面が強い」と話す。
受託加工にとどまらず、積層造形技術に基づいて構想設計を行い、同社製工作機械の内製部品の量産にも金属積層造形を活用。現在は工作機械の主軸に搭載されるドローバーや、ボールねじに使われるデフレクターを、AMを活用して内製している。
デフレクターはこれまでMIM(金属射出成形)で作られており、外注していた。「AMに置き換えることで精度が良くなり、納期が早まり、工程集約もできた。少量多品種の生産にも対応できるようになった」(大多和氏)。デフレクターの製造に使用しているLASERTEC 30 SLM 3rd Generationは、4本のレーザーを使用することで高い生産性も実現している。
AMイノベーションセンタでは、これまで培ってきた同社の知見を用いて、ユーザーの部品の機能向上、技術革新を支援する。設備としては、LASERTEC 3000 DED hybrid、LASERTEC 65 DED hybrid、LASERTEC 30 SLM 3rd Generation、LASERTEC 12 SLM 3rd Generation、LASERTEC 30 DUAL SLMを置き、DED方式が2台とSLM方式が3台の計5台をそろえている。同社のエンジニアがDfAM(Design for Additive Manufacturing)による形状の最適設計から、積層条件の提案、実際の造形まで行う。
積層造形の前後工程で必要な粉末保管庫や3Dスキャナーなどの周辺機器も設置しており、ショールームとしての役割だけでなく、最先端の金属積層造形技術を用いて、製品開発から生産、検証までの一連の工程を体感できるようになっている。
その他、AMの基礎から先端技術までを学べるコンテンツや動画、実用事例として30種類以上のワークも展示している。
AMの普及に向けた壁の1つは“設計”とみる。「製造技術が新しくなれば、従来とは全く違った発想で、自由な発想で設計しなければならない。AMは部品の形状を変えない限り成り立たない。機械や技術が成熟していっている中で、AMを生かした設計ができる人材を育成しなければならない」(大多和氏)。
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