2022年11月8〜13日まで東京ビッグサイトで開催された「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2022)」において、近畿大学次世代基盤技術研究所 技術研究組合 次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)の京極秀樹氏が「金属積層造形技術の最新動向と今後の展開」をテーマに講演を行った。
2022年11月8〜13日まで東京ビッグサイトで開催された「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2022)」において、近畿大学次世代基盤技術研究所 技術研究組合 次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)の京極秀樹氏が特別講演に登壇。「金属積層造形技術の最新動向と今後の展開」をテーマに、金属AM(Additive Manufacturing、アディティブマニュファクチャリング)装置の開発動向や課題などについて講演を行った。
金属AMが製造業にもたらす変化としてまず挙げられるのが、製品の高機能化だ。近年ではトポロジー最適化やラティス構造に対応したソフトが設計で使われるようになり、CADそのものが昔と比べて変化している。それに伴い製品が高機能化し、これまでの切削、鋳造、鍛造といった工法では、求める製品の形状を実現できなくなってきた。
こうした状況を鑑みて京極氏は「海外が先んじて製品の高機能化をしていくところに、日本がついて行けなくなるのが一番怖いところだ」と指摘。「設計の変化に伴い工法も変化していることを念頭に置いてほしい」と呼びかけた。
一体化製造による高品質化やコストダウンも金属AMの優位性の1つだ。一体化製造の有名な例が、従来20以上のパーツから構成されていたジェットエンジンの燃料ノズルを1つにまとめた米GEアビエーションの例だが、今後細かな溶接ができる技術者が減少するにつれ部品の一体化を検討せざるを得なくなり、その結果金属AMを使わざるを得なくなることが考えられる。
金属AMはデジタルのマニュファクチャリングの有力な技術の一つであることから、京極氏は「今後、世界に先んじてモノづくりで勝とうとすれば、この技術は必須となってくる」とその重要性について述べた。
また、アフターコロナのモノづくりにおいても金属AMは変革をもたらすという。コロナ禍によってサプライチェーンの問題が顕在化したが、そのような状況にあってもデジタル技術があれば安定した生産が可能になる。
加えて、製品の補修や、既に部品がないものを作りたいといった場合にも、デジタルデータさえあれば製品を作製できるため、生産システムの変革にも大いに役立つ。これらの点からも、金属AM技術は非常に重要な技術といえる。
現在、AMの世界ではDesign for Additive Manufacturing(付加製造のための設計、DfAM)という言葉が流行している。金属AM技術の特徴は形状と材質による高機能化にある。これまでにない形状を実現することで軽量化でき、複雑形状製品の一体化構造や熱流体シミュレーションによる高効率化も達成、新材料開発による高機能化をかなえられることにある。
京極氏は金属AMの導入について「まだ先のことと思っているかもしれないが、上流の会社からこれでやれと言われたらやらざるを得ない。そのためには、CADのソフトが変化したことにより、設計の考え方そのものを変える必要がある」と述べた。
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