DMG森精機は、約90億円を投資して改装工事を行っていた奈良事業所の開所式を開催した。
DMG森精機は2025年4月14日、約90億円を投資して改装工事を行っていた奈良事業所(奈良県大和郡山市)の開所式を開催し、報道陣に同所を公開した。
奈良事業所のある奈良県大和郡山市は、DMG森精機の前身に当たる森精機製作所(以下、森精機)の創業の地でもある。1948年に兄弟だった森林平、茂、幸男の各氏によって森精機が設立され、繊維機械の製造、販売を開始。1958年に繊維機械の製造を止め、工作機械の製造を始めた。
現在の奈良事業所の土地は、もともとボール盤メーカーの吉田鉄工所の工場があった。1986年に森精機が吉田鉄工所に資本参加することになり、1987年に森精機の奈良工場が建てられ、以来、工作機械の製造が行われてきた。
開所式であいさつに立ったDMG森精機 代表取締役社長の森雅彦氏は「当時は平均年齢27歳、年商は数百億円。いわゆる日本のベンチャー企業だった。ファナックや安川電機(当時)のCNCを付けて、米国や欧州に輸出していた」と振り返る。
2016年には奈良事業所に約5000m2のシステムソリューション工場を設けていたが、伊賀事業所(三重県伊賀市)に工作機械の製造を集約することになり、奈良事業所で工作機械の組み立てを行っていたエリアの改装工事を3年かけて実施し、従来比4倍の約2万m2の広さを持つシステムソリューション工場へと生まれ変わった。
同社では工作機械単体だけでなく、さまざまな自動化システムを提供している。パレットハンドリングシステム「PH150」は、最大積載重量150kg(オプションで250kg)、320×320mmのパレットが10基(オプションで400×400mmを6基)搭載可能となっている。モジュール式ロボットシステム「MATRIS」は、搬送装置やワークストッカ、機内計測装置などのモジュール化した周辺機器とロボットを組み合わせており、「MATRIS Light」は手押し台車に協働ロボットを搭載している。大容量工具マガジン「CTS(Central Tool Storage)」はラック式の工具マガジンを備え、搬送ロボットがマガジンから工具を自動で工作機械に投入する。近年の同社工作機械の平均単価の上昇には、5軸など機械の多軸化に加えて、これら自動化システムの提供も貢献している。
森氏は「日本やドイツで作られた高度で耐久性の高い5軸加工機、複合加工機に自動化システムを付けている。奈良事業所でテストを行っている間に、全世界からオペレーターやプログラマーが来て、奈良で観光も楽しみながら、機械の使い方を覚え、各国に戻っていただく。そしてユーザーの現場では、垂直立ち上げを行うというのが、この工場のミッションだ。現在の工場の付加価値は100億円弱だが、それを2030年には400億円にしたい」と話す。
新しい奈良事業所は北工場、制御盤工場、南工場の3つの工場と6階建てのオフィスがあり、約220人の従業員が働く。ツールハンドリングやワークハンドリング、パレットハンドリングを中心とした自動化システムの設計から組み立て、出荷前のユーザーの立ち会いまでを一貫した生産体制で提供する。長さ100m以上の自動化システムラインも構築可能で、操作盤の組み立てや制御盤の試作品組み立ても行っている。
自動化システムは、ユーザーの工場で再構築されるが、事前に課題を抽出、解決してから出荷するため、立ち上げまでのリードタイムを短縮できる。厳格な入室規制や監視カメラの設置などによって、機密性が高い案件にも対応している。
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