奈良県内には奈良事業所の他、同社の奈良商品開発センタおよびAMイノベーションセンタが置かれている。加えて、グループ会社で半導体製造装置や工作機械向けの計装機器を作るマグネスケールの工場を建設しており、基板検査装置を製造する完全子会社のサキコーポレーションの工場も奈良事業所に隣接する。
森氏は「現在は奈良にある拠点を合わせて200億円ほどの売り上げだが、2030年には600〜700億円にしたい。さまざまな周辺機器メーカーとも協力しながら、世界中のユーザーをここに迎え入れ、日本の生産技術の活力になっていきたい」と意気込む。
来賓として登壇したファナック 代表取締役会長 CEOの稲葉善治氏は「私も(森精機の創業と同じ)1948年生まれであり、2025年で77歳の喜寿になる。1968年に森精機が初めてNC旋盤を開発した際に、われわれのNC装置を採用いただいたことが両社の関係の始まりとなった。奈良事業所では、ファナックのロボットを活用した自動化システムを数多く生産していただいている。DMG森精機が進めるMX(マシニングトランスフォーメーション)は、機械加工現場のスマート化、知能化を意味しており、MXの実現に向けて、『MATRIS』や『MATRIS Light』『WH-AMR』など次々と新製品を市場に投入している。MX実現の場として、奈良事業所に世界最大級のシステムソリューション工場が稼働することは、工作機械業界にとっても、エポックメーキングな出来事だ。米国大統領のドナルド・トランプ氏の関税政策により、産業界は不透明かつ不安定な状況に突入している。しかし、どんな状況にあっても必ず突破口は存在する。奈良事業所のシステムソリューション工場はまさにその突破口の1つになると確信している。ここから発信される自動化システムが、関税や為替の障壁をものともせず、米国を含む世界の製造業界に採用され、製造現場の自動化と効率化に貢献されることを期待している」とあいさつした。
経済産業省 製造産業局 産業機械課 課長 兼 製造産業DX 政策企画調整官の須賀千鶴氏は「森氏には経産省のモノづくり政策全体のアドバイザーとして、産業構造審議会の委員も務めていただき、アドバイスをもらっている。経産省としては、工作機械業界のさらなる発展のために、DX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)への対応、サプライチェーンの強靱化に向けた取り組みなど、積極的に支援を強化していく。2025年2月には第7次エネルギー基本計画が閣議決定され、その中では最新の工作機械を導入していく必要性に言及している。製造現場のデジタル化、スマートファクトリーの導入は今後の日本のモノづくりの競争力を左右する重要な要素だ。最新鋭の設備により、製造プロセスの効率化、品質向上が図られ、業界全体が発展していくことを期待している。米国の関税政策が世間をにぎわせており、皆さまにもご心配をおかけしているが、自動車やその部品をはじめとする多くの製品が潜在的に影響を受けると見込まれ、現在、広範な影響調査を行っている。短期の支援策に加え、必要な対応を政府一丸となって取り組む」と述べた。
奈良県知事の山下真氏は「DMG森精機は、世界最大手の工作機械メーカーの1つであり、奈良にも東京と同じく本社を置いている。奈良県内で最大の企業であり、唯一のグローバル企業だ。行政や文化の面でもさまざまな支援をいただいている。奈良県が誇るべき企業だ」と話した。
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