神戸製鋼所とパナソニック コネクトは、アーク溶接の新工法と新溶接材料の販売および開発協力に関する協業に合意した。
神戸製鋼所(以下、神戸製鋼)とパナソニック コネクトは2025年5月7日、アーク溶接の新工法と新溶接材料の販売および開発協力に関する協業に合意したと発表した。
近年、自動車の排ガス規制の強化がグローバルで進んでいる。自動車メーカーは燃費の向上やCO2排出削減を実現する方法をさまざまな角度から検討しており、その主要な解決策として車体の軽量化に取り組んできた。
鉄鋼メーカーはこれらのニーズに応えるため、高張力鋼板や亜鉛めっき鋼板を開発し、自動車メーカーもこれらの新しい鋼鈑の採用を拡大している。だが、高張力鋼板では強度が高い代わりにプレス加工が難しくなるため、加工精度の問題から板組みのバラツキ(板隙や狙い位置)が大きくなり、溶接工程での品質確保が課題となっている。
また、2010年代から塗装を必要とする足回り部品などにおいて、溶接後のビード表面に残存する溶接スラグによる腐食問題が注目され、溶接スラグ対策の必要性も高まっている。
今回の協業では、両社が共同でこれらの問題を解決する新工法、新溶接材料の普及を目指す。
神戸製鋼では2024年11月に、建設機械や製缶分野をはじめとする中厚板の幅広い溶接用途向けに、ワイヤの正送/逆送動作によって溶滴移行に慣性を活用した制御を行うAXELARCプロセス搭載溶接ロボットシステムとソリッドワイヤ「AXELARC AX-1C」を発売した。
パナソニック コネクトは、AXELARCプロセスを基に、自社の新ロボットコントローラーTAWERSへ適用し、保有する薄板溶接に関するノウハウを元にチューニングを施した新型ロボットコントローラーG4のオプションソフト「AXEL-AWP4」を開発、販売する。
AXEL-AWP4搭載溶接ロボットシステムは、AXEL-AWP4溶接を実装したWG4コントローラーから構成された溶接ロボットシステム「ActiveTAWERS4」および神戸製鋼が新たに開発した溶接ワイヤ「AXELARC AX-1AS」「AXELARC AX-1A」の組み合わせで構成される。
従来の正逆ワイヤ送給制御溶接施工では、コンタクトチップへの負担が大きく、長時間連続溶接性の確保に課題があったが、AXELARC AX-1AS、AXELARC AX-1Aには特殊な処理が施してあり、新溶接プロセスの特殊電流波形と組み合わせることで、長時間連続溶接性を飛躍的に向上させることに成功した。
また、新しいワイヤ送給制御により、低電流域から高電流域までの低スパッタ、アーク溶接における幅広いビード形状や溶込み形状の適正化の他、高速溶接、スラグ付着のない滑らかなビード外観などの高品質な溶接を実現。さらなる生産性向上、溶接品質向上に貢献する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.