オムロン社長の辻永順太氏やインダストリアルオートメーションビジネスカンパニーのカンパニー社長である山西基裕氏に市場の展望や米国のITサービス企業コグニザントとの提携への期待などを聞いた。
オムロンは2025年4月8日(ドイツ時間)、ドイツ・シュトゥットガルト近郊で、米国のITサービス企業コグニザント(Cognizant)との戦略的パートナーシップ契約に関する発表記者会見を実施。今回、現地でオムロン社長の辻永順太氏やインダストリアルオートメーションビジネスカンパニーのカンパニー社長である山西基裕氏に、米国関税政策への見解や構造改革の進捗および今回の提携への期待などを聞いた(インタビュー内容は2025年4月8日時点のもの)。
辻永氏は2年前の2023年4月、同社執行役員常務 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長から現職に就任した。
就任初年度の2023年度は中国景気の低迷などを受け、大口顧客による設備投資の延期や縮小が相次ぎ、売上高は前年比6.5%減の8188億円、営業利益は同65.9%減の343億円に落ち込み、2024年2月には構造改革プログラム「NEXT 2025」を発表。これは、制御機器事業の停滞などを受けて2025年3月期までとしていた中期経営計画(SF 1st Stage)の目標を取り下げ、2024年4月1日~2025年9月30日までを「構造改革期間」として取り組むもので、同社は国内外で計2000人超の人員削減を実施するなど、その取り組みを進めてきた。
―― この2年の振り返りをお願いします。
辻永氏 就任時から次の成長のステージに引き上げるため、成長に対する投資は積極的に実施したいという思いを持っていた。ただ、就任初年度に業績が非常に悪化したため、まず構造改革し、未来に向けた体制の整備を進めてきた。
必要なのは収益構造の改革と、成長に向けた打ち手だ。構造改革は1年を経て、収益構造の改革はほぼほぼめどが立ち、比較的強い収益構造の基盤ができてきたと感じている。次に必要なのは、未来に向けた持続的な成長を実現するための打ち込みだ。それは投資をして終わりではなく、市場に打ち出し、評価してもらうところまでやりきらなければならない。現在はまさにそのフェーズだ。
今回のような制御機器事業の提携(コグニザントとの提携)も、そうした「持続的な成長」にぴったりはまる。この分野や製造業の中で今後5年、10年で大きく様変わりしていく領域であり、こうした取り組みが着実に売り上げに転化されていけば、今後もう一段ジャンプアップした成長戦略が打てるだろう。
―― 2024年度第3四半期決算発表では、通期予想について制御機器事業で売上高と利益、全体でも利益の上方修正を発表しました。その後の状況の変化や足元の市況への見解は?
辻永氏 2024年度はやるべきことは着実にやってきた。一方、米国 大統領のドナルド・トランプ氏が2025年1月の就任後から打ち出してきたさまざまな施策が、どういった方向に進むか見通せない状況が続いていたが、ここにきて次々と悪い方向の話が出てきた。今後そうした影響に対して、どう対処していくかが非常に大きなポイントになる。
―― 現在最大の懸念事項は関税でしょうか? その影響や既にとっている対策は?
辻永氏 足元で最大の懸念事項は、間違いなく関税だ。関税のパーセンテージはこれまでとは全く異なる。前トランプ政権時にも中国からの輸入品に関税がかけられたが、当社はその対応として、米国向け製品の製造をできるだけ中国以外に移管する対策を取った。そのため、今回も就任後、改めて関税を打ち出した時点では、それほど影響はなかった。
しかし、その後米国の関税は、ほとんど全方位が対象となり、また、パーセンテージもこれまでとは桁が違うものになった。これらが本当に実行されれば、当社も大きな影響を受けるだろう。また、製造業の設備投資の需要が減衰するというのも間違いない。そうなると、関税の影響だけではなく、事業にも影響が出てくるだろう。現在、そうしたインパクトがどの程度かを見定めているところだ。
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