IVIが目指しているのは、日本のモノづくりに最適な“リファレンスモデル(参考となる活動の形)”の創出だ。インダストリー4.0やIICなどは、標準化への取り組みなども強化しているが「IVIは国際標準化団体ではなく、積極的に標準化を進めていくということはしない。国際標準と合わせたり、提言を行うような活動にとどめる。それよりも現実的に日本の製造業にとってメリットのある“緩やかな標準”を生み出していきたい」と西岡氏は述べている。
具体的な取り組みとして、製造現場が「新たな課題」と感じた具体的な事例を、数社が集まって抽象化し「活動モデル」としていく。それをWebサイトで共有し、同様の課題を持つ企業が検索して確認できるようにするという。
その際には以下のような手順で行うという(図1)。
企業の抱える問題を実用的なレベルで抽象化した「シナリオ」を作り、場面と関わる人員(アクター)を設定。その中で問題を解決できる取り組みや手法を抽象化した「活動モデル」を作り出していく。そしてそのそれぞれの活動に結び付く「情報」の動きから、最適なICTの仕組みなどを作り上げていく。
「シナリオ」を生み出す課題は、会員企業間で話し合うが、同じ課題を持つ企業が2社以上集まった場合、まずはオープンな「ワーキンググループ」で「シナリオ」を設定する。その後、両社のノウハウに関わる領域になれば「プロジェクト」として、それ以降は契約を結び、参加企業のノウハウが流出するようなことがないようにして、掘り下げていくという運営手法を取る。西岡氏は「情報システムのモデリングや、大規模なフレームワークとは異なり、あくまでも現場の課題をベースにした問題解決の手法を蓄積していく」と述べている(図2、図3)。
IoTの領域では「サイバーフィジカルシステム」がポイントだと指摘されている。サイバーフィジカルシステムとは、インターネットおよびコンピューティングの力(サイバー)と、実際の世界(フィジカル)を結び付けたシステムのことだ。これにより、現実の世界の情報をサイバー空間に送り、コンピューティングパワーを利用して解析を行い、その結果をフィードバックすることで現実世界でより良い結果を得るというようなことが可能となる。
しかし、西岡氏は「フィジカルの世界とサイバーの世界を直接的に結ぶと、それぞれで問題点が発生する。効果的にこれらを結ぶには『人が意味を知覚し意図を持って行動する世界』である『アクチュアルワールド』が重要になる。日本の製造業の現場力もこのアクチュアルワールドで生まれたものだ。この人が与える解釈の部分をIVIが担えるようにしていきたい」と語っている(図4)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.