ニデックが牧野フライスにTOB実施へ、想定シナジーとは?製造マネジメントニュース

ニデックは工作機械メーカーの牧野フライス製作所に対して、株式の公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。

» 2024年12月27日 12時30分 公開
[長沢正博MONOist]

 ニデックは2024年12月27日、工作機械メーカーの牧野フライス製作所(以下、牧野フライス)に対して、株式の公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。

買い付け価格は1株1万1000円、名称は維持する方針

ニデックによる「牧野フライス製作所に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」[クリックでWebサイトへ]出所:ニデック

 今回の発表に先立ち、牧野フライスには事前に協議の申し入れなどは行っていないという。公開買い付けは2025年4月4日に開始し、期間は31営業日となる予定だ。買い付け価格は1株当たり1万1000円としている。ニデックは所有割合で50%となる1169万4400株以上の取得を目指す。

 ニデックはこれまでに三菱重工工作機械(現ニデックマシンツール)、OKK(現ニデックオーケーケー)、TAKISAWAを買収するなど、工作機械事業を強化して「世界屈指の総合工作機械メーカー」となることを目指している。

 ニデックは同日、企業価値の最大化に向けた経営統合に関する意向表明書(以下、意向表明書)も発表した。

 その中で、牧野フライスについて「経営資源をフライス盤から発展させたマシニングセンタの第一人者であり、マシニングセンタの技術・製品・サービスを徹底的に磨きあげ、高付加価値な製品の追求と生産性向上によりグローバル競争力を高めてきた。また、放電加工機においても、長きにわたり高く評価され確固とした地位を築いている。(ニデックは)旋盤、歯車機械や大形機(横中ぐり盤、門形五面加工機)をラインアップしており、お互いに持ち合わせていない製品や技術がある。将来伸張が期待される分野として、精密レーザー加工機、金属3Dプリンタは、両社が共に開発に力を入れている技術であり、両社が一緒になればそれらの製品や技術が追加され、連携により開発が加速されることに加え、技術力を融合することで複合性が高い製品を生み出すなど顧客への新たな提案も可能になると考えている」とコメントしている。

ニデックによる「企業価値の最大化に向けた経営統合に関する意向表明書」[クリックでWebサイトへ]出所:ニデック

 ニデックは想定シナジーとし「製品・技術の補完性」「生産の補完性」「販売網・サービスの補完性」「組織体制・資金調達」を挙げている。

 製品・技術の補完性では、牧野フライスのマシニングセンタ、放電加工機に、ニデックの旋盤、歯車機械、大形機(門形五面加工機、横中ぐり盤)、マシニングセンタが加わることで幅広い顧客ニーズに応えることができるようになる他、「マシニングセンタのうち、アジア向け汎用品で一部競合するが、それ以外は事業の重複がほとんどない」「(牧野フライスは)5軸加工など高い技術力が求められる航空機向けや金型向けマシニングセンタを多く手掛けているが、その分野ではニデックオーケーケーをはじめとする当社グループとは事実上競合はしない」(ニデック)などとした。

 生産の補完性では、ニデックの工作機械部門は北米、欧州、台湾などに、ニデックグループ全体ではメキシコなどにも生産拠点を保有しているが、両社が生産拠点を持つ中国、インドと牧野フライスのシンガポール拠点を含め、全世界での生産拠点の補完性が成立するなどとした。

 販売網・サービスの補完性では、効率的な販売、サービス網の拡大や市場カバレージの拡大実現の他、ニデックグループのIT、OA、家電、産業、商業、車載、航空宇宙などの既存顧客への販売網を活用して牧野フライスの販売機会が増える可能性があることを挙げた。

 組織体制・資金調達では、売上高が2兆円を超えるニデックの資金調達力を活用することが可能となり、牧野フライスの資金調達力の底上げにつながり、巨額の資金を要する開発や生産拠点の展開などの検討、実現がより容易になるとした。

 なお、買収完了後の商号については、「(牧野フライスが)既に工作機械業界でその名を知られていることを踏まえて、維持する方向で慎重に検討している」とコメントした。

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