高専×パナソニックで「モノづくり教育」を再定義、教育と企業のギャップを埋める製造マネジメントニュース

国立高等専門学校機構とパナソニック ホールディングスは、新たな人財育成を目的とした包括連携協定を締結したと発表した。

» 2025年11月06日 07時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 国立高等専門学校機構(以下、高専機構)とパナソニック ホールディングス(以下、パナソニックグループ)は2025年11月5日、新たな人財(※)育成を目的とした包括連携協定を締結したと発表した。日本のモノづくりにおける人財育成の新たなカリキュラムを共同で開発する。高専機構と民間企業が中長期視点で相互の人財育成を目的としたカリキュラム開発は初の試みだという。

(※)一般的には「人材」だが本稿では人を財産と捉える趣旨も含むため「人財」と表現

photo 包括連携協定を締結した国立高等専門学校機構 理事長の谷口功氏(左)とパナソニック ホールディングス グループCHROの木下達夫氏(右) 出所:パナソニックグループ

 モノづくりの在り方が、ハードウェア中心からソフトウェアとの融合によるソリューション型へと変化する中、これらに対応する人財育成が不可欠となっている。従来の学校教育では、変化する産業界の高度化や複雑化に対するニーズに、教育カリキュラムとのギャップを埋めきれないケースが多かった。また、教員のスキルやノウハウのアップデートが十分ではないケースもあった。一方で企業側では、長期スパンでの人財育成が難しくなっている点や、デジタル技術やソフトウェア技術中心の高度化への対応などで課題を抱えていた。そこで「これらのギャップを埋めるために高専機構との包括的な提携を行う」とパナソニック ホールディングス グループCHROの木下達夫氏は述べる。

 高専機構 理事長の谷口功氏は「高専機構では全国51校を合計すると学生総数は約5万人となり、今までの卒業生総数は48万人以上となる。理系人材の輩出機関としては非常に大きな規模であり、高い専門性と実践的スキルを持って社会課題を解決するソーシャルドクターのような人材輩出を目指している。今回の協定を通じて教育を受けた高専の人材により、パナソニックグループが世界のトップに立ち、日本の復活に貢献できるようになってほしい」と語る。

photo 高専機構の概要[クリックで拡大] 出所:高専機構

カリキュラムの共創など3つの取り組みを推進

 具体的には以下の3つの点に取り組む。

 1つ目は「実践的な教育カリキュラムの共創」だ。パナソニックグループのモノづくり技術や知見を活用し、カリキュラムの共同開発をはじめとした次世代のモノづくり人財を育成する実践的な教育を共創する。学生が現場課題の解決力や新たな価値創出スキルを体系的に習得することを目指す。「カリキュラムはこれからだが、学生が授業で習ったとしても企業で実際にどのようなことが行われているのかは伝わりにくい。それをパナソニックグループのモノづくり現場を使っていろいろ体験してもらうことで生きた知見が得られるようになる。インターンシップでも行っているが単発で範囲が狭かった。それを進化させたい」(パナソニック オペレーショナルエクセレンス リクルート&キャリアクリエイトセンター センター長の坂本崇氏)。

 2つ目は、「教育、研究の高度化に向けた支援」だ。講演や教材の提供、専門人財の派遣などの支援を通じて、全国の国立高等専門学校における教育や研究の高度化、教育の質的向上に貢献する。

 3つ目は、「人財交流」だ。産学がオープンに次世代のモノづくりを担う人財の育成について検討できる場の下地づくりとして、ワーキンググループを組成する。この枠組みを活用し、パナソニックグループの技術者と高専機構の教員が交流を深めることで、教育や研究の現場における知見の循環と連携の活性化を図る。さらに、技術者が教育に、教員が企業の事業活動にも参画するクロスアポイントメント制度の活用により、連携を推進する体制を強化し取り組みの定着を目指す。「担当者が代わったら終わりになるような単発の取り組みで終わらせないためにワーキンググループ形式で継続的に取り組みを発展できるようにする」(坂本氏)。

photo 高専機構とパナソニックグループとの協力の枠組み[クリックで拡大] 出所:パナソニックグループ

若年層へパナソニックブランドの浸透を

 また、これらの具体的な目的に加え、若年層でのパナソニックグループの認知度向上も今回の提携の狙いだという。

 「人財としてパナソニックグループへの就職を進めるようなことはしないが、パナソニックグループという会社があるということを知ってもらうために接点を増やしたいとは考えている。パナソニックグループが若年層が手に取るような製品を扱っていた時代は、ブランド認知度は高かったが、今はそれが減っているというのは事実だ。製品やサービスで接点が作れなければ、こういう形で作ることも重要だろう。逆に学生のマインドがリアルに得られるという点での価値も大きいと考えている」と坂本氏は述べている。

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