京都ヒューマノイドアソシエーション(KyoHA)が一般社団法人化を果たし、新たな参画企業を迎え入れるなど活動を拡大している。ヒューマノイドのベースモデルの完成は2026年春ごろ、災害対応型/研究用モデルの公開は同年末を予定している。
京都ヒューマノイドアソシエーション(以下、KyoHA)は2025年10月2日、京都市内で進捗発表会を開催した。同年6月の設立から約3カ月で一般社団法人化を果たし、新たな参画企業を迎え入れるなど活動を拡大している。KyoHAが開発するヒューマノイドのベースモデルの完成は2026年春ごろ、災害対応型/研究用モデルの公開は同年末を予定しており、日本発のヒューマノイドが再び世界の主戦場に挑む道筋が示された。
KyoHAの理事長を務める早稲田大学 教授の高西淳夫氏は冒頭のあいさつで「AI(人工知能)が真に進化するには“身体”が不可欠である」と語る。AIの学習は膨大なデータを必要とするが、テキストベースの情報は既にインターネット上にある情報を吸収できている。しかし、「実世界での経験を通じたデータの取得には、人間に近い構造と機能を備えたハードウェアが必須だ」(同氏)という。
高西氏は、自身が携わってきた長年のヒューマノイド研究の歴史を振り返り、精密機構の重要性を腕時計の事例を交えて説明した。機械式時計がゼンマイや軸受という精緻な仕組みによりエネルギーを蓄え、長期にわたり動作を維持できるように、ヒューマノイドにも高度なハードウェアの技術が欠かせないと指摘。特に軸受は「ロボットの命」ともいえる要素であり、その品質が性能を左右すると強調した。
また高西氏は、日本の若手研究者が減少し続けている現状に強い危機感を示し、「このままでは国内のヒューマノイド研究が絶滅しかねない」と述べる。産業界とアカデミアが連携して教育や開発を進め、次世代の技術者を育成することが急務であると訴えた。
最後に高西氏は「日本の知見を結集し、災害現場など社会の最前線で役立つ純国産ヒューマノイドを実現したい」とあらためて決意表明し、あいさつを締めくくった。
SREホールディングス 取締役の佐々木啓文氏は、KyoHAにおける参画企業の広がりについて報告した。
設立時点で名を連ねた早稲田大学、テムザック、村田製作所、SREホールディングスに加え、そこから約3カ月の間に加わった沖縄科学技術大学院大学(OIST)、ソニーグループ/ソニーコンピュータサイエンス研究所、マブチモーター、カヤバ、NOK、ヒーハイストといった新たな参画企業を紹介。精密機構、モーター、油圧、シール、直動機器といった分野を担う国内有力企業が合流したことで、KyoHAは「総力戦」と呼ぶにふさわしい産学連携体制を形成しつつあるという。
佐々木氏は、各社が自ら「やりたい」と手を挙げて参画している点に意義があると強調し、「参画企業がそれぞれの持つ強みを積極的に持ち寄ることで、これまで不可能と考えられてきた純国産ヒューマノイドの開発が現実味を帯びてきた」と説明する。また、短期間で多様なプレイヤーが集まった背景には「日本の技術を再び世界に立たせたい」という共通の危機感と使命感があるとし、KyoHAがその受け皿になりつつあるとした。
また佐々木氏は「日本の技術の総力戦で挑む。参画各社の思いが結集すれば、必ず実現できる」と語り、拡大するKyoHAの輪が今後の開発加速につながるであろうことを示した。
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