マブチモーター 取締役 常務執行役員 事業統括の中村剛氏は、同社の事業概要と今回のKyoHAに参画した意義について説明した。同社は1954年の創業以来、教育玩具用モーターを皮切りに、音響機器、家電、精密機器、自動車分野へと事業を拡大しており、現在では世界中の自動車で採用される小型モーターのリーディングカンパニーとなっている。標準化戦略に基づき、安定供給と高品質を実現し、年間13億個を製造/販売し、40カ国以上で事業を展開している。
今後の成長領域としては「モビリティ」「マシナリー」「メディカル」の3分野に注力しており、特にロボット用途を含むマシナリー分野に大きな期待を寄せている。近年はブラシレスモーターの開発とラインアップ拡充を進めており、ヒューマノイドの各関節や可動部に自社モーターが採用されることについて「大変うれしく、同時に責任も感じている」(中村氏)という。
中村氏は「社会課題である労働力不足や高齢化の解決にヒューマノイドは貢献できる。当社としても国際社会への継続的な貢献という理念の実践につながる。今回のKyoHAへの参画を大きな使命と位置付けている」と語る。また、マブチモーターが長年支援してきた高専ロボコンや学生ロボコンなど教育分野での取り組みも紹介し、未来の人材育成を見据えている点を強調した。
最後に中村氏は「日本発のロボティクス、ヒューマノイドを完成させる機会を大変エキサイティングに感じている」と語り、グループ全体で知見を結集して貢献していく構えを見せた。
カヤバ 技術本部 基盤技術研究所 所長の伊藤隆氏は、同社がこれまで自動車用ショックアブソーバーや油圧ショベル用油圧機器を提供し、安全/安心な社会づくりに貢献してきたことを紹介した。特に近年は、災害対応の現場で高いレジリエンスが求められており、そこにヒューマノイド技術が大きな役割を果たすと感じているという。その認識から、「国産ヒューマノイドの基盤を築く取り組みに強く共感し、今回の参画を決断した」(伊藤氏)という。
伊藤氏は、同社が有する「振動制御」と「油圧パワーの精密制御」という2つのコア技術を生かして「ヒューマノイド開発において微力ながら確実に貢献したい」と語る。さらに、防災分野での社会実装というプロジェクトのビジョンに対しては、単なる技術提供にとどまらず、現場で実際に使える形に仕上げるところまで責任を持って取り組む方針である。
加えて、今回のKyoHA参画を通じて自社の技術力向上にもつながることから、特にレジリエンス領域を中心に、新たな事業を創出しながら社会の安全/安心に継続的に貢献していく。伊藤氏は「ヒューマノイドにおける大型のパワー制御は必ず必要になる分野であり、われわれの強みを生かして信頼されるパートナーになりたい」と述べる。
オンラインで参加したヒーハイスト 専務取締役の尾崎文彦氏は、自社が世界で唯一、精密球面軸受を製造/販売していること訴えた。20年以上前からKyoHA 理事長を務める高木氏の研究室におけるロボット関節部の開発に協力してきた実績があり、人型ロボット研究で築いてきた実績は大きい。
また、精密部品加工事業でも4脚ロボットのパワーユニット向け部品を手掛けるなど、幅広い要素技術を培っている。今回のKyoHA参画により、「独自の技術と長年の実績を生かし、ロボット関節部の機能向上に貢献していきたい」(尾崎氏)としている。
KyoHAが描くのは、単なる技術開発にとどまらない。日本発ヒューマノイドが社会に溶け込み、人を支え、そして人を超える力を発揮する未来である。研究者と企業の知見を結集したこの挑戦は、災害対応や高齢化社会といった課題の解決に直結すると同時に、新たな産業と価値を生み出す起点となるだろう。世界の主戦場に再び立ち、日本のモノづくりの底力を示す歩みがここから始まる。
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