ネクスペリアは、オランダ政府が「物品供給法」に基づく命令を一時停止したこと受けて、国内外の自動車メーカーの生産活動に影響を与えている同社製半導体の供給再開の方向性について発表した。
オランダの汎用ロジック/ディスクリート半導体メーカーであるネクスペリア(Nexperia)は2025年11月19日(現地時間)、オランダ政府が「物品供給法」に基づく命令を一時停止したこと受けて、国内外の自動車メーカーの生産活動に影響を与えている同社製半導体の供給再開の方向性について発表した。
オランダ政府は同年9月30日、「物品供給法」に基づきネクスペリアの経営権を接収した。その理由としては、同社のCEOを務めていたZhang Xuezheng氏が製品資産、資金、技術および知財などを海外に不正移転したことを挙げている。このことによってネクスペリアの欧州での生産能力を活用できなくなる事態を回避するため、Zhang Xuezheng氏をCEOから罷免し、CFOのStefan Tilger氏を暫定CEOに就けるなどの人事を断行していた。
今回の物品供給法に基づく命令の一時停止は、ネクスペリアの親会社であるウイングテック・テクノロジー(Wingtech Technology)が本拠を置くとともに。ネクスペリアの後工程工場がある中国の当局との協議を受けてのものだ。これにより、米国、オランダ、中国の規制が解除されたため、ネクスペリアの中国の後工程工場から半導体製品を供給を再開する上での障壁は消えたことになる。
なお、物品供給法に基づく命令の一時停止後も、ネクスペリアの経営陣は暫定CEOをStefan Tilger氏が務めるなど変更はない。ネクスペリアの株式の議決権も独立管理人の管理下に置かれているため、ウイングテック・テクノロジーが行使することはできない状態である。
ネクスペリア製半導体の供給再開で最大のボトルネックになっているのが、同社の後工程工場を管轄する中国法人の動向だ。オランダ政府による経営権接収以降、中国法人がオランダ本社の指示管理に従わない状況が続いている。オランダ本社から送った、欧州の前工程工場で生産した回路形成済みウエハーに対する支払いの拒否、正当な理由や説明のない中国法人の社印の不正利用、不正な銀行口座の開設と顧客に対する同口座への送金指示、顧客や下請け業者、サプライヤー、従業員への虚偽の情報を含む無許可の手紙の送付などを行っているという。
なお、オランダ本社は、中国政府による中国法人からの輸出制限がある中で、2025年10月の1カ月間、回路形成済みウエハーを供給していた。このウエハーの出荷量や安全在庫量などを考慮すると、中国法人は数カ月間操業を継続できると想定されている。米国、オランダ、中国のの規制が解除される中で、中国法人からの製品出荷は行えない場合「その責任は中国法人が全面的に責任を負うことになる」(ニュースリリースより)としている。
ネクスペリアは、回路形成済みウエハーの直接販売や出荷などを含めて、半導体製品の代替供給手段を模索している。また、2026年中をめどに欧州やアジアの拠点での生産能力拡大を段階的に進めていく方針である。
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