芝浦工業大学、早稲田大学、富士通は、量子コンピュータを活用して多関節ロボットの姿勢を効率よく制御する手法を開発した。複数の関節を持つロボットの逆運動学計算の解を効率的かつ高精度に導けるようになる。
芝浦工業大学、早稲田大学、富士通は2025年8月25日、量子コンピュータを活用して多関節ロボットの姿勢を効率よく制御する手法を開発したと発表した。
同手法を用いると、複数の関節を持つロボットの目標位置から関節角度を求める逆運動学計算の解を効率的かつ高精度に導ける。ロボットのリンクの位置や向きを量子ビットで表現し、親子関節の連動性を量子もつれで再現する量子回路を用いることで、必要な計算回数を抑えつつ解の精度を引き上げる。
理化学研究所と富士通が共同開発した64量子ビットの実機ならびに量子シミュレーターで有効性を検証し、従来手法に比べ少ない計算回数で最大43%の誤差低減を確認した。
同手法は、関節角度から手先位置を求める順運動学を量子回路で計算し、逆運動学計算自体は古典計算機で解くというハイブリッド構成が特徴だ。関節間の連動性を量子もつれでモデル化すると親関節の動きが子関節に与える影響を自然に反映でき、逆運動学計算の収束速度と精度が向上する。
研究チームは、ロボットなどの17個の関節を持つ全身多関節モデルの運動計算を、30分程度で実行できるという試算を示した。少数の量子ビットで多関節ロボットの姿勢を表現可能で、開発段階の量子コンピュータ(NISQ)環境でも実装できる。
今後は、ヒューマノイドロボットや多関節マニピュレータの障害物回避やエネルギー最適化、量子フーリエ変換など高度アルゴリズムとの連携によるさらなる高速化を目指す。
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