東京エレクトロン デバイスとグリーンは、農業IoT「e-kakashi」を用いた鹿児島県南種子町での支援成果を発表した。ソーラーパネル搭載で電源不要のIoTゲートウェイで環境データを収集/分析し、パプリカ出荷量1.3倍の増収を実現した。
東京エレクトロン デバイス(以下、TED)とグリーンは2026年3月3日、東京都内でプレスセミナー「食の安全保障と地方創生を支えるスマート農業の取り組み〜DX・AIで実現する南種子町の農業改革〜」を開催し、農業IoT(モノのインターネット)ソリューション「e-kakashi」を活用した鹿児島県南種子町での農業支援について発表した。
e-kakashiは、農場における環境データの収集から分析、管理、通知までを包括的に提供する栽培支援ソリューションである。その中核となるのが、畑に設置して各種センサーから取得したデータを集め、クラウドへ直接送信するTED製の通信機器(IoTゲートウェイ)だ。
e-kakashiの開発をリードしてきたグリーン 代表取締役CEOの戸上崇氏は、「なぜベテラン農家は収量が多く、品質が高いのか」という疑問からプロジェクトをスタートさせた。「植物科学的な観点から植物が受ける環境ストレスを分析した結果、ベテラン事業者ほど、植物にとってストレスの低い環境を作り出して育てていることが分かった。そこで、栽培管理をデータとして可視化し、誰もが実践できるソリューションを目指した」(戸上氏)という。
e-kakashiは戸上氏がソフトバンクに入社した2013年に、社内起業制度案件として開発をスタートさせ、2015年にPSソリューションズからサービスをリリースした。その後、2024年に戸上氏が設立したグリーンにソフトバンクから事業譲渡され、現在の体制となっている。
サービス開始当初の第1世代デバイスには、農地での電源確保、親機/子機間の通信距離や遮蔽(しゃへい)物の考慮といった課題があった。また、当時の通信方式(アドホックネットワーク)では、雨天時に電波が減衰して通信が途切れてしまう弱点もあった。
TEDが2015年にセンサーチップを提案する立場で当時のPSソリューションズを訪問したことから、両社の連携が始まった。他社ゲートウェイと接続してデータの統合を図りながら、通信の安定性担保と電源不要での稼働を可能にする、新型ゲートウェイの独自開発へと舵を切った。
東京エレクトロン デバイス EC技術本部 第一技術部 部長代理の木村雄一郎氏は、「屋外に設置する通信ゲートウェイは、扱うデータ量自体はそれほど大きくないものの、消費電力を極限まで抑え、長期間日照がなくても稼働し続けるタフさが求められた。この厳しい要望に見合った省電力システムを設計し、製品化へと落とし込むプロセスには苦労した」と開発当時を振り返る。その結果、市販のバッテリーで起動が可能となり、通信障害時にも約1カ月分のデータを内部メモリに蓄積できる改良が施され、現在のe-kakashiへと進化した。
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