Astemoと日立製作所は、自動運転車両に搭載されるAIである「運転支援AI」の学習/検証/展開のプロセスを革新する新たなAI開発基盤を構築する。日立のフィジカルAIをテーマとするイベント「Hitachi Physical AI Day」内の講演で、Astemoと日立の担当者が同基盤を構築する狙いについて説明した。
Astemoと日立製作所(以下、日立)は、自動運転車両に搭載されるAI(人工知能)である「運転支援AI」の学習/検証/展開のプロセスを革新する新たなAI開発基盤を構築すると発表した。AstemoのSDV(ソフトウェアデファインドビークル)開発基盤である「IoVプラットフォーム」に、日立ミッションクリティカル領域で培ってきたフィジカルAI技術を組み合わせることで2026年末までに構築を完了させる方針だ。
日立が2026年5月20日に開催したフィジカルAIをテーマとするイベント「Hitachi Physical AI Day」内の講演で、Astemo 技術開発統括本部 次世代モビリティ開発本部 自動運転技術開発部 シニアダイレクターの長塚敬一郎氏と日立製作所 デジタル事業開発統括本部 Data Studio Senior Data Scientistの諸橋政幸氏が登壇し、運転支援AI開発基盤を構築する狙いについて説明した。
「Hitachi Physical AI Day」における講演の様子。登壇者は左から、モデレーターの日立 Deputy Head of AI CoEの吉田順氏、同社の諸橋政幸氏、Astemoの長塚敬一郎氏[クリックで拡大]SDV時代の到来により、自動車メーカー各社はAIを継続的に進化させていくという、共通かつ複雑な課題に直面している。Astemoと日立は、この業界共通の課題に対し、安全思想を設計段階から組み込み、開発プロセスを自律的に進化させ、将来的には業界全体で活用できる、安定的なAI開発基盤を提供することが不可欠であると捉え、今回の協業を決めた。
Astemoは2021年に、日立オートモティブシステムズとホンダ傘下のケーヒン、ショーワ、日信工業が統合して発足したティア1サプライヤーだ。電動車向けのモーターやインバーター、自動運転システム/ADAS(先進運転支援システム)、ブレーキやサスペンションなどの足回りなどを中心に事業を展開しており、それらのハードウェアだけでなくソフトウェアの開発力も強みとなっている。
長塚氏は「『走る、曲がる、止まる』を支えるハードウェアのモノづくり力と、ソフトウェアで統合制御するクロスドメイン/クロスレイヤーの技術力に加え、これら車両内のシステムに当たるIn-Carと連携するOut-Carをつないで新しい価値を創出するクラウド技術がAstemoの強みだ。Internet of Vehicleから名付けたIoVプラットフォームは、In-CarとOut-CarをつなぐSDVの開発基盤だ。データを収集してクルマの進化を継続させるサイクルこそがSDVであり、そういう意味ではIoVプラットフォーム=SDVと言っても過言ではない」と語る。
AstemoのSDVの根幹ともいえるIoVプラットフォームだが、その競争力を強化するために選んだパートナーが日立だ。Astemoが有する「走る、曲がる、止まる」を支える車両統合制御や、ADAS(先進運転支援システム)/自動運転システムの開発で積み重ねてきたAI技術と、日立がミッションクリティカル領域で培ってきたデジタルツイン環境や、個人を特定する情報を秘匿化し安全に管理する技術、フィジカルAIの社会実装力という両社の強みを融合し、AI基盤、データ基盤、データセンターを統合した先進的な開発環境としてAI開発基盤の構築に取り組むという。
IoVプラットフォームの強化に向けた取り組みとしては「止まらないインフラ環境(セキュリティ/セキュアな基盤構築)」「デジタルツイン開発/検証」「フィジカル開発/検証」「開発プロセス全体の効率化(AIエージェント活用)」の4つがある。これらのうち日立が貢献するのが「止まらないインフラ環境」と「デジタルツイン開発/検証」の2つである。「継続的に進化するSDVを実現するためには1日でもインフラ環境が止まってはいけない。デジタルツインによる仮想環境は運転支援AIのアルゴリズムをさまざまな環境で試すために必要不可欠だ。これら2つの取り組みでは、日立が社会インフラ事業で培ってきた知見を生かせると考えている」(長塚氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
組み込み開発の記事ランキング
コーナーリンク