日立製作所と日立ビルシステムが次世代エレベーター「アーバンエース HF Mirai」を発表。業界初の光学式センサーで物理ロープを廃止し、地震時の接触リスクを解消した。将来の保守無人化を見据える。
日立製作所と日立ビルシステムは2026年5月14日、日立ビルシステムの亀有総合センター(東京都足立区)において、次世代コネクテッドエレベーター「アーバンエース HF Mirai(エイチエフミライ)」に関する記者説明会を開催した。独自開発の光学式センサーを採用し、位置制御による運行効率の改善、地震時における部品の接触リスク排除といった安全性向上を実現した。同年4月よりビルやマンションなどに向けて販売を開始している。
日立グループは現在、中期経営計画「Inspire 2027」において、日立の注力4領域(エナジー、モビリティ、インダストリー、デジタル)の基本モデル「Lumada」と、次世代ソリューション群「HMAX」を中核に据えた戦略を推し進めている。2025年度は、Lumada関連事業がグループ全体の4割にあたる4兆1000億円に拡大、HMAXで売上収益3000億円を達成した。2027年度にLumadaの売り上げ収益比率5割超、最終的目標を8割規模と見据えている。
ビルシステム事業の2025年度の売上収益は8528億円に上る。同事業でも現在、デジタル領域へのシフトに注力しており、その戦略の中核が「HMAX for Buildings」だ。日立はこれまで累計195万台超の昇降機を納入し、約30年間にわたり稼働データを蓄積してきた。HMAX for Buildingsは、デジタライズドアセットであるネットワークにつながる65万台の昇降機と2万6000人のフロントラインエンジニアから得られるデータに先進のAI(人工知能)を組み合わせることで、ビルマネジメント領域に新たな価値創出を目指すものだ。新製品のアーバンエース HF Miraiも、HMAX for Buildings関連の製品に当たる。
アーバンエース HF Miraiは、従来機と比較して地震時のレジリエンス強化や、筐体位置検出の高度化を実現した。これらをハードウェア面で支えているのが、日立ビルシステムが「業界で初めて実装した」と語る、光学式センサーの採用である。
従来のエレベーターでは、かご(エレベーターの筐体部分)外側の光電装置が、昇降路に配置した遮蔽(しゃへい)板を通過することで位置を検知していた。また、速度の検出は、昇降路全体に張り巡らされたガバナーロープがガバナー(調速機)を回転させることで検出していた。しかし、この物理的な方式では、地震などで建物が大きく揺れた際にかごや周辺の部品と接触するリスクがあり、実際に年間10〜20件の接触事故が報告されている。
新たに導入した光学式センサーは、PCで使用される光学式マウスの原理を応用して開発したものだ。かご上部外側の左右にセンサーを設置し、ガイドレールに向けてLED光を照射。その反射光を、特殊なレンズを通してイメージセンサーで撮影する。1秒間に1000回の連続撮影を行い、ガイドレール表面の微細な凹凸や模様の移動量を画像処理で解析する。これにより、μm単位での高精度な速度と位置の算出を実現した。
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