波長3μm付近の中赤外光を検知、分子ごとの特徴を読み取れる小型赤外光センサー組み込み開発ニュース

NECらは、室温で波長1.55μ〜3μm帯までの中赤外光を検出可能な小型赤外光センサーを試作した。ゲルマニウム基板上にすずを13.6%含有した高品質層を形成し、近赤外から中赤外までをカバーする。

» 2026年06月03日 14時00分 公開
[MONOist]

 NECは2026年5月20日、名古屋大学、産業技術総合研究所と共同で、室温において波長1.55μ〜3μm帯までの中赤外光を検出可能な小型赤外光センサーを試作したと発表した。

 今回開発したデバイスは、近〜中波赤外域で高い透過性と導電性を両立する薄膜電極「iTCO(infrared-transparent conductive oxide)」と、赤外光を効率よく吸収するゲルマニウムすず(GeSn)材料を組み合わせたフォトダイオードだ。名古屋大学が開発した低温分子線エピタキシー(MBE)法により、ゲルマニウム基板上に、すずの平衡固溶限界を超える13.6%のすずを含有した高品質なp型GeSn混晶層のエピタキシャル成長に成功した。これにより、3μm帯の感度を持つ狭ギャップ半導体薄膜が作製可能となった。

キャプション 試作したiTCO/p型GeSn/n型Geフォトダイオードの断面構造とデバイス顕微鏡像[クリックで拡大] 出所:NEC
キャプション iTCO/p型GeSn/n型Geフォトダイオードの分光検出能のベンチマーク 出所:NEC

 中赤外と呼ばれる3μm付近の光は、メタンなどの温室効果ガスや呼気に含まれる分子、食品や医薬品の品質の違いなどを見分けられる、分子ごとの特徴を読み取れる領域の光である。しかし、従来のヒ化インジウムガリウム(InGaAs)半導体センサーでは検出波長の上限が拡張型でも2.6μmまでで、2.6μ〜3.3μmの領域を室温で測定できる小型かつ低コストな技術が求められていた。

 試作したiTCO/p型GeSn/n型Geフォトダイオードは、通信波長帯である1.55μm付近において1.09A/Wの高感度を達成した。これにより、1つの素子で近赤外から中赤外までをカバーするデュアルバンド検出を室温で実証した。iTCO電極は、In2O3に水素(H)とセリウム(Ce)を共ドープし、固相結晶化条件を最適化したもので、受光層への効率的な光入力を可能にした。

キャプション iTCO/p型GeSn/n型Geフォトダイオードの感度特性 出所:NEC
キャプション iTCO膜の近$301C中波赤外域での高い透過性 出所:NEC

 本技術はSi-LSIと材料互換性が高いIV族半導体混晶デバイスであり、既存の半導体製造プロセスを活用できるため、大面積アレイ化や低価格な中赤外カメラへの展開が可能だ。

 今後は、CH4などのガス検知や環境モニタリング、呼気分析によるヘルスケア、食品や医薬品の品質管理、産業プロセスの監視、セキュリティ用分光センシングなど、幅広い産業および生活に密着した分野への応用が期待される。

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