2025年6月11〜13日にパシフィコ横浜で開催された「画像センシング展2025」では、さまざまな画像処理機器やセンシング技術の展示が行われた。ハイパースペクトルカメラがアプリケーションの広がりを見せるとともに、前回から引き続きAIを活用した画像認識にも注目が集まった。
マシンビジョンシステム、AI(人工知能)を活用した画像認識、産業用カメラなどが一堂に会する「画像センシング展2025」が2025年6月11〜13日の3日間にわたってパシフィコ横浜で開催された。さまざまな展示の中から新技術や新製品を中心に紹介する。
はじめに2種類のカメラデバイスを紹介する。
パナソニックは前回の「画像センシング展 2024」に続いてハイパースペクトルカメラを出展した。前回は試作段階だったため研究部門を抱えるパナソニック ホールディングス(パナソニックHD)がブースを構えたが、事業化のめどが立ったということで、事業会社であるパナソニック エンターテインメント&コミュニケーションに移管された。製品化は2026年度中の予定だ。
ハイパースペクトルカメラは、可視光または赤外線を波長で区切って複数のスペクトルで撮影するカメラである。フィルターで分光するためそれぞれのスペクトルの映像が暗くなってしまう性質があるが、パナソニックはファブリーペローフィルターという空間ランダムなフィルターを開発し、この課題を解決した。同社は「世界トップレベルの高感度」と位置付けており、環境光でも撮影が可能だと訴求する。
製品化予定の可視光モデルは、波長域は420〜900nmで、波長分解能は10nmである。最大4K/30fpsでの撮影が可能だ(高感度モード時は2K)。オートフォーカスおよびオート露光に対応している。また、独自開発のAI画像検査ソフトも提供する。
ボディーには標準的なマイクロフォーサーズ規格を採用し、目的に応じてレンズを交換することもできる。
ハイパースペクトルカメラは肉眼では区別のつかないわずかな色の違いや、材料ごとに異なるスペクトルの違いを検出できるため、例えば塗装や被膜のムラの判別、液体の判別、樹脂素材の判別などの応用が可能である。説明員によると研究機関からの問い合わせも多いという。
また、波長域が1000〜1600nmの短赤外線(SWIR:Short Wavelength InfraRed)を用いるハイパースペクトルカメラの試作機を参考展示した。液体や樹脂の判別や、コンクリートなどの劣化の判定に利用できる。製品化は市場のニーズを見ながら検討していくという。
また、光学機器商社のケイエルブイは、ハイパースペクトルカメラのアプリケーションとして、パナソニックHDのプロダクト解析センターが提供する「樹脂耐久性評価」というサービスを紹介していた。
SWIR帯域のハイパースペクトルカメラを用いて、樹脂の短期寿命予測、リサイクル樹脂の劣化診断、繰り返し負荷による累積疲労の劣化診断などを実施するサービスだ。なお、現時点ではパナソニック製のSWIR対応カメラがないため、ケイエルブイが扱っているノルウェーのNEOの「HySpex Classicシリーズ」を組み合わせている。
ハイパースペクトルカメラは他のメーカーも出展しており、コンクリート構造物などの劣化やひび割れなどが見つけやすくなるといったデモを行っていた。今後、アプリケーションが広がる可能性がありそうだ。
2014年創業のスペインのPhotonicSENS(扱い元:八州電装)は、同社の主力ソリューションであるライトフィールドカメラ「apiCAM」シリーズを出展した。
ライトフィールドカメラとは、撮像素子の前面にマイクロレンズアレイを配置したカメラで、複眼カメラとも呼ばれる。明るさだけではなく、光の入射方向を記録することができるのが特徴で、後の画像処理によって、フォーカスを任意の面に合わせたり、画像から立体的な映像を生成したりできる。
apiCAMは、1つのメインレンズで、1.4MピクセルのRGB画像と2.2Mピクセルのデプスデータを同時に取得できるのが特徴のライトフィールドカメラである。両方の画像に視差(パララックス)が生じない他、ToF(Time of Flight)センサーに比べて「小さい対象物でも測定できる」「数cm程度の近距離も測定できる」「デプスの精度が1mm以下と高い」といったメリットがあるという。
デモでは、デプスの点群データの表示に加え、デプスデータから高精度な3Dモデルを瞬時に生成する様子を示していた。
基板実装検査、ピッキングなどでの物体認識、キズや塗膜厚さの測定、刻印の判定、被写体のサイズの計測や3D化などへの応用が可能である。日本市場に関しては、ライトフィールド方式のメリットを伝えながら、さまざまな分野に紹介を進めているとのことであった。
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