「TRONプログラミングコンテスト2025」はRTOSとAIの融合に挑戦、審査結果を発表組み込み開発ニュース

トロンフォーラムは「2025 TRON Symposium-TRONSHOW-」において、国内外の大手マイコンメーカー4社が協力する「TRONプログラミングコンテスト2025」の審査結果を発表するとともに表彰式を行った。

» 2025年12月15日 06時15分 公開
[朴尚洙MONOist]

 トロンフォーラムは2025年12月11日、東京都内で開催された「2025 TRON Symposium-TRONSHOW-」(同月10〜12日)において、国内外の大手マイコンメーカー4社が協力する「TRONプログラミングコンテスト2025」の審査結果を発表するとともに表彰式を行った。

「TRONプログラミングコンテスト2025」の受賞者と審査委員による記念撮影 「TRONプログラミングコンテスト2025」の受賞者と審査委員による記念撮影[クリックで拡大] 出所:トロンフォーラム

 同コンテストは、国内外の技術者および学生を対象に、IEEE(米国電気電子学会)が認定するリアルタイムOS(RTOS)である「μT-Kernel 3.0」を用いたマイコンのアプリケーションやミドルウェア、開発環境、ツールなどの各分野でプログラミング内容を競う。「RTOSアプリケーション一般部門」「RTOSアプリケーション学生部門」「RTOSミドルウェア部門」「開発環境・開発ツール部門」の4部門で参加募集を行い、賞金総額は500万円となっている。

 第2回の開催となった今回は、国内外から64件のエントリーがあり、そのうち31件が最終的な作品応募に至った。これらの作品を利便性、実用性、独創性、将来性などの観点から総合的に評価し、μT-Kernel 3.0のプログラムとして、RTOSのプログラムの特徴が実現できていることや、今回のコンテストのテーマ「TRON×AI AIの活用」に即してAI(人工知能)技術を取り入れていること、オープンソースとして公開することなどを評価ポイントとして審査が行われた。

 受賞作品は、優秀賞4件、入賞2件、激励賞5件の合計11作品が選ばれた。各部門の優秀賞は、RTOSアプリケーション一般部門が須藤義明氏による「LGX-Shield〜加速度×AI で橋梁の異常をリアルタイム検出するエッジモニタ〜」、RTOSアプリケーション学生部門がSupun Navoda Gamlath氏/Shamila Jeewantha氏/Chathura Gunasekara氏による「RescueBot」、RTOSミドルウェア部門が久保寺祐一氏にいる『自己進化するLoRa通信ライブラリ「LoRabbit」』、開発環境・開発ツール部門が阿部耕二氏による「μT-Kernel×AIの学習環境〜ライントレースロボットでリアルタイムOS・AIを学び、体験する〜」が選ばれた。

部門 受賞者 作品名 概要
RTOSアプリケーション一般部門 優秀賞 須藤義明 LGX-Shield〜加速度×AI で橋梁の異常をリアルタイム検出するエッジモニタ〜 橋梁など社会インフラの”揺れ”を計測し、AIが安全/危険を即時に判定する小型モニタリング装置
入賞 森龍二 μT-Kernel搭載ウェアラブル動作解析ツール 腕に装着して動きを読み取り、お手本との違いをその場でLED表示する動作解析デバイス
入賞 渋川敬之 AMAGOI環境データ推論システム 環境センサから取得した観測データをもとに一定期間後の気象状態を予測して出力するシステム
激励賞 関谷武一郎 危険予知を支援するシステム 障害物との距離、気象条件及び地理座標から現在地を予測し、衝突を回避するシステム
激励賞 湯澤竜也 micro:bit de TinyML♪ エッジノードAI「TinyML」をmicrobit+μT-Kernel 3.0環境で実行させるためのPorting Layer
RTOSアプリケーション学生部門 優秀賞 Supun Navoda Gamlath/Shamila Jeewantha/Chathura Gunasekara RescueBot 自律型災害生存者検出用リアルタイムオンデバイスAIフレームワーク
激励賞 Adarsh A/Aayush S/Asrith S/Adithya A Visual Inertial SLAM ボード内蔵のNPUを活用し「人工の合成LiDAR」データを生成するシステム
激励賞 Kariuki Samuel Kiragu/Feng Zuocheng PROTOTYPE STRESS BALL BASED ON THE TRON RTOS WITH AI INTEGRATION 触覚センシングと組込み機械学習を統合した「スマートストレス管理ボール」
RTOSミドルウェア部門 優秀賞 久保寺祐一 自己進化するLoRa通信ライブラリ「LoRabbit」 複雑な設定や大容量データ転送が困難なLoRa通信を、μT-Kernel 3.0とAIの力で解決するLoRa通信ライブラリ
激励賞 本谷茂 よりどり 組込み機器でAIを動かす際に必要となるハード的入力と出力結果の解釈を支援するライブラリ
開発環境・開発ツール部門 優秀賞 阿部耕二 μT-Kernel×AIの学習環境〜ライントレースロボットでリアルタイムOS・AIを学び、体験する〜 micro:bitを用いたライントレースロボットを題材にμT-Kernel、エッジAIを学べる学習環境
TRONプログラミングコンテスト2025の受賞作品

 審査委員長を務めたトロンフォーラム 会長で東京大学名誉教授/INIAD cHUB(東洋大学情報連携学 学術実業連携機構)機構長の坂村健氏は「今回は『TRON×AI AIの活用』というテーマの下、RTOSとAIという、一見すると距離のある両者をどのように結び付け、実装へと落とし込むかが試される、非常に挑戦的なコンテストとなり、国内外から意欲的かつ創意工夫に満ちた作品が多数寄せられた。TRON RTOSとAIの可能性が国境を越えて広がっていることを実感した一方で、中にはアイデアが先行し、実装が間に合わなかったものや、AIの活用意図がやや曖昧な作品も見受けらた。AIとリアルタイム組み込み制御の両方を扱うには、相応の設計力と計画性が求められる。ぜひ今回の経験を次につなげ、より完成度の高い作品として再挑戦してほしい」と述べている。

 なお、第3回となる「TRONプログラミングコンテスト2026」の開催も決定している。テーマは2025年から引き続き「TRON×AI AIの活用」で、エントリー審査に合格した参加者には、STマイクロエレクトロニクスの「STM32N657」やルネサス エレクトロニクスの「RA8P1」を搭載するマイコンボードや、パーソナルメディアから「micro:bit」が無償で供与される。エントリーは既に開始しており2026年3月31日に締め切る予定だ。

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