FMEA辞書は、設計担当者が気付かない可能性のあるキーワードを事前にFMEAシートに埋め込み、作成時にチェックするための仕組みだ。辞書、チェックシート作成支援、過去データベース参照の機能を持つ。
本田氏はこの辞書で、材料、不具合の要因となるストレスの種類、故障メカニズムなどをリスト化、併せて用語の解説や社内の設計基準などを一覧できる仕組みを構築した。大掛かりなシステムではなく、既存のグループウェアの機能をフルに活用し、1画面上で辞書をチェックできるようにしている。
加えて、設計者自身が作成するFMEAシートについても、マクロ機能などを駆使し、要因と故障モードのキーワード集を作成、FMEA辞書と同様の分類で確認できる仕組みを用意した。例えば、ある部品に発生するストレスを選択すると過去に発生した課題から類似の条件で発生が懸念される問題が一覧で確認できる。動的負荷だけでなく熱応力や被液などとの関係も一覧できる。
初期のデータ設定は社内の設計基準書や、既に整理されていた部署ごとの留意点をまとめた文章情報を活用しているという。これに、独自にストレス情報や、不具合発生メカニズムなどの情報を加えていき、有効な未然防止ツールとして昇華させている。
これらのツールを利用して設計者個々が気付きの機会を増やすと同時に、デザインレビューなどの会議体もFMEAシートの充実により、より発展的な議論に結び付けることができているという。
この活動は、品質に特化したデザインレビューであり、設計者が作成したFMEAを基に関係者が集まり、心配点を抜けなく洗い出す活動だ。
デンソーでは、このデザインレビューのプロセスを体系化し、PQDR(PQDR:Perfect Quality Design Review)活動として標準化、実践している。プロセスの流れは下図の通りだ。
こうした活動の結果として、社内の品質評価指標の数値が改善し、設計者の経験に依存せずに過去のノウハウを各自が学び、気付くことのできる体制が整いつつあるという。
◇ ◇ ◇
本田氏らの取り組みは、FMEAとFTAをミックスした興味深い活動事例といえる。同社ではこの取り組みによって、設計段階のヌケ・モレを確実に縮小し、効率的かつ高い品質の設計を進められる体制が整いつつあるという。本稿が設計プロセスやデザインレビュー精度向上のヒントとなると幸いだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.