ファッションワールド東京(2021年3月23〜25日、東京ビッグサイト)において、FMB 代表取締役の市川雄司氏が登壇し、「『3Dモデリング』がもたらすアパレルDXの未来」をテーマに基調講演を行った。本稿ではその内容を紹介する。
ファッションワールド東京(2021年3月23〜25日、東京ビッグサイト)において、FMB 代表取締役の市川雄司氏が登壇し、「『3Dモデリング』がもたらすアパレルDXの未来」をテーマに基調講演を行った。本稿ではその内容を紹介する。
市川氏は国内唯一の3Dモデリングコース「TFL」(Tokyo Fashion technology Lab)のノウハウを基とし、2020年11月にファッションを3DCGで製作するFMBをジョイントベンチャーで立ち上げた。その後、2021年1月には、ファッションの3DCGの作成者を「3Dモデリスト」と称して、その資格者の検定制度を行う一般社団法人の「FDE」(ファッションデザインエンジニアリング協会)を繊研新聞社と共同で設け、検定の準備を推進。ファッション3DCGによりアパレル業界でのDX(デジタルトランスフォーメーション)に挑戦している。
スクール事業であるTFLが人材を育成、テクノロジーの資格機関FDEが資格制度を運用し人材の価値向上を図るというサイクルで、新しいファッション業界を構築していく考えだ。市川氏は「ファッション業界の人は新しいテクノロジーに及び腰になる人が多いが、情報の正しい理解を促すことで、一緒にファッションのDXを実現していきたい」と語っている。
現在はあらゆる産業分野で「第4次産業革命」が進んでいるといわれている。ファッション業界においても、第3次産業革命の時代は「大量生産」により、さまざまな階層の人たちにファッション製品を届けるということが重視されてきた。一方で、第4次産業革命とされる現在は、この「大量生産の在り方についてあらためて問われる状況が生まれている」(市川氏)。特に、ファッション業界では供給量の半数が、売り残ってしまう状況があるなど、環境に大きな負荷をかける産業となっている。
経済産業省の資料によれば世界のファッション産業の市場規模は15年後には倍増するとの予測がある。日本市場は約9兆円をピークに縮小しているが、世界的には急成長産業に位置付けられている。この拡大する市場において、現在と同じようにモノを多く余らせる形で供給する仕組みが続けば、新興国など一部の地域では供給が不可能になる可能性も生まれてきている。この課題に対して市川氏は「世界第3位の市場規模がある日本のアパレル産業が、デジタルによって産業構造を大きく変える。さらにこれを世界中に広げていくことで、業界全体の課題解決につなげられる」と語る。
デジタル技術を活用する動きを、テクノロジーインフラ環境の進化も大きく後押ししている。3DCGはデータが重く、現在の通信環境では使い勝手が悪い面もあるが、5Gが普及すると状況は一気に変わってくる。そのためにも、今から対応する準備を始めておく必要がある。市川氏はFMBの設立から数カ月間で約150社のアパレル・商社を訪問し、そこでこうしたインフラ環境の変化と併せて3DCG活用を提案している。
3DCGの最新ソフトウェアはアニメーションを活用できることが大きな特徴で、素材を動かすことでのハリ感などを表現できる。3Dモデルは生地スワッチとパターンのデータがあればアパレル向けの3D CADツール「CLO」によって組み上げることが可能だ。「ただ、1つのソフトウェアでは完成度の高いCGを作成することができない。多くの企業がこの段階でつまずくことが多い。複数のソフトを組み合わせることで精度を高めることができる。こうした3DCGのポイントなども伝えていく」と市川氏は語る。
3DCGを用いることで、モノを作らずにCG上で生地などの物性情報が視覚的に伝えることができるようになる。「これが、モノの無駄を大きく削減することにつながる」(市川氏)。
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