東芝デバイス&ストレージがパワー半導体技術について説明。東芝から独立分社するデバイスカンパニーの成長をけん引することが期待されているパワー半導体事業だが、低耐圧と高耐圧のMOSFETで業界トップの性能を実現しており、次世代パワー半導体として期待されているSiCデバイスやGaNデバイスの開発にも注力している。
東芝デバイス&ストレージは2021年12月16日、オンラインで会見を開き、同社のパワー半導体技術について説明した。
東芝は同年11月に東芝本体からインフラサービスとデバイスの事業を分離独立させ、3つの独立会社に分割する方針を発表している。現在、東芝デバイス&ストレージが手掛ける半導体とHDDなどのデバイス系の事業を受け継ぐことになるデバイスカンパニーの売上高規模は2021年度時点で8700億円となっているが、その中核であるとともに今後の成長をけん引することが期待されているのがパワー半導体事業である。
東芝デバイス&ストレージは、足元の事業戦略として、社会インフラ/産業向け、車載向け、データーセンター/サーバ向けという、産業や社会に変革をもたらす3つの分野に注力している。同社 パワーデバイス技師長の高下正勝氏は「これら3つの分野の省電力、高効率化、小型軽量化に貢献することで、カーボンニュートラルな社会の実現を支えていくのがパワー半導体だ。当社は豊富なラインアップとパッケージであらゆる電子機器をサポートしている」と語る。
パワー半導体の製品カテゴリーとしては、数百V以下の電圧に対応するMOSFETやIGBT、ダイオードなど主にディスクリート半導体(個別半導体)を扱うパワーデバイスと、複数のパワー半導体を組み合わせたモジュールもしくはシングルチップによって数千Vの電圧に対応するハイパワーデバイスに分けられる。
これまで東芝デバイス&ストレージでは、200mmウエハーを用いた製造ラインが主力だった。しかし現在は、電動化や省エネなどを目的にパワー半導体への需要が伸びていることから、1枚のウエハーからより多くの半導体チップが得られる300mmウエハーの製造ラインの立ち上げを進めているところだ。200mmラインの増強を先行して進めながら、2023年度には300mmラインでの量産を始め、2025年度下期には2021年度上期と比べて1.9倍まで生産能力を拡大する計画である。
高下氏は「もともとパワー半導体は少量多品種が求められていたため200mmラインで対応してきたが、市場が大きく拡大することで300mmラインの投資に十分に耐えられる事業になってきた。300mmラインは生産能力を向上できるだけでなく、加工性向上による性能向上、より標準化された装置を用いることによるスマートファクトリー化も期待できる」と強調する。
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