特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2021年12月14日 10時00分 公開

中小製造業のIoT活用に5つのキーポイントと3つの壁、星野物産の取り組みモノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

ソラコムのオンラインセミナー「製造現場の業務改善に役立つDX/IoTの始め方」に、業務用/家庭用の小麦粉製品を手掛ける星野物産が登壇。小麦粉製品製造装置のIoT化で直面した課題と、それらの改善活動で重視した「5つのキーポイント」について解説した。

[長町基,MONOist]

 ソラコムは2021年9月28日、オンラインでセミナー「製造現場の業務改善に役立つDX/IoTの始め方」を開催。業務用/家庭用の小麦粉製品を手掛ける星野物産が登壇し、小麦粉製品製造装置のIoT(モノのインターネット)化で直面した課題と、それらの改善活動で重視した「5つのキーポイント」について解説した。

「課題の抽出」からの「改善対策の立案」が最大の難所に

 群馬県みどり市に本社をおく星野物産は、小麦粉の製粉と、小麦粉製品であるうどん、ラーメンなど乾麺の製造、これらの販売を手掛けている。IoT活用を始めた理由は、年間の事業計画における業務改善の一つの手法として組み込んでいくためだった。

星野物産のWebサイト 星野物産のWebサイト。創業118年という小麦粉製粉と小麦粉製品メーカーだ[クリックでWebサイトへ移動]

 同社工場はまず、小麦粉製造装置にIoTキットを取り付け、業務改善を進める上で必要な1つ目のキーポイントとなる「現状業務の可視化」から始めることとした。30秒〜1分単位で装置の稼働状況を可視化し、取得したデータを2次加工することで、さらに深い分析を行った。星野物産 製粉部門 主任の山本洋右氏は「日によって製造開始時間にムラがあること、機械が効率的に稼働していないことは以前から感じていた。IoT化によって得られたデータはおおよそ想像していた通りの結果ではあったが、可視化されたことによって今まで感覚的に捉えていたものが確信に変わった瞬間でもあり、手応えを感じた」と語る。

星野物産の高頭謙介氏(左)と山本洋右氏(右) 星野物産の高頭謙介氏(左)と山本洋右氏(右)

 次に可視化されたデータを基に、2つ目のキーポイントとなる「課題の抽出」に移行した。ここで重要だったのは、可視化されたデータを客観視して社内の関係者を巻き込みながら、他の社員にも積極的な参加を促すことだった。

 可視化されたデータからは、時間当たりの生産能力にばらつきがあることや、機械が稼働していない時間があること、連続生産ができていないことなどの課題が読み取れた。しかし、このことを現場担当者に伝えたところ「直接的な原因は不明だが、感覚的には分かっている」などの反応が返ってきたという。

 課題を把握したらそこから続けて改善対策の立案に移るべきだが、この現場担当者の反応からは、従来手法の不備を認めてその上で改善対策への賛同を得ることが難しいという現実が浮かび上がってくる。今回の取り組みで最大の難所になったところだという。「ここで重要なのは、やはり従来のやり方の否定を恐れないことだろう。その上で、関係者全員でコミュニケーションを取って乗り越えていかなければならない」(山本氏)。

 そこで星野物産では、グループワークなどでいきなり改善策を検討するのではなく、まずは基本的な生産管理の手法を使って、現状の生産性の低下が行っている原因のあぶり出しを行った。そこから、物理的ロスと時間的ロスが多いという気付きを得て、そこに焦点を当てて改善策を検討することとした。そして、幾つか打ち出した改善策について、効果の期待値と経済的観点をマトリックスに落とし込んで改善計画のターゲットを決めた。これが、第3のキーポイント「改善対策の立案」となる。

 第4のキーポイント「改善対策の実行」については、改善効果が出るまでに何度でも試行する必要があり、経営陣やマネジャーは小まめにフォローやアドバイスを行うことが大切となる。星野物産 製粉部門 係長の高頭謙介氏は「実践に移る際には、可視化したデータを基に現場担当者と課題を共有し、改善対策はわれわれから一方的に提案するのではなく、実際に対策を実行する現場担当者の意見を重視した。改善対策が極端に負担にならないこと、通常の作業の質を落とさないことに重点を置き、できることから始めた」と述べる。

 そして第5のキーポイント「改善後業務の可視化」では、現場が実践した業務改善について、その取り組みの行動を評価して認め、経験を積んでもらうことで、改善の成功体験者を増やし、改善の輪を広げていく必要がある。星野物産でも「改善後は製造量が改善前に比べ約10%増えた。また、機械の稼働状況も高まり、一方で装置を使用しない時間帯は電源をオフにして無駄な電力を消費しないようになった。その他、効率よく作業を行うという意識が高まったということも感じている」(高頭氏)という。

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