今回の取り組みでは、何より失敗を恐れない雰囲気作りが重要だったという。高頭氏は「上司からは、取りあえずやってみろという後押しがあり、プレッシャーもなかった」と説明する。そして、経営層ともコミュニケーションを取り、説明をしっかり行ったことも取り組みがスムーズに進んだ一因のようだ。
また、改善に向けてのコストについても「ロボットの導入や現場の装置のレイアウト変更などは経済的に難しい。しかし、IoT化や現状の可視化については、費用を抑えてかつ効果が期待できるので取り組みやすかった」(高頭氏)としている。従来の改善策は途中で終わってしまったこともあったが、今回はデータを可視化したことによって、関係者全員が共通認識を持てていたので最後まで続けられたとする。さらに高頭氏は、「今回は業務改善の中でも、生産効率の改善に着目してIoTの採用に至ったが、今後は、生産設備の稼働状況を監視できるようなことにIoTを使っていきたい」と意欲を示している。
星野物産のIoT活用による業務改革を支援したスマーティエ 代表の茂原俊雄氏は「業務改善にはここまで示してきたように5つのキーポイントがある。特に重要となるのが、現状業務を客観的な数値に置き換えて見えるようにする『現状業務の可視化』と『改善後業務の可視化』だ」と強調する。
IoTは業務改善の状況を数値化/可視化する重要なアイテムとなる。もし客観的な数値に置き換えることができなければ、主観的な勘や感覚値が出発点となってしまい、課題を見つけにくくなり、客観的ではなくなり説得力も欠けてくる。そして、目標値設定が曖昧になり、改善度合いも見える化できず、トライ&エラーの意義も薄れて、結局途中でうやむやになり、改善が失敗に終わるケースが多くなる。
また、スマーティエは、中小製造業の業務改善、成否を分ける3つの壁の存在を明らかにし、それらを乗り越え成功する方法を示している。第1の壁は「出発点」にあり、そもそもの業務改善自体の進め方を理解していないというもの。第2の壁は「仕組み」で、業務改善を成功させる戦略のもろさが課題になる。そして第3の壁は「価値観」。企業文化に直結する現場主体の業務改善遂行が欠けている場合だ。
まず第1の壁を克服するには客観的な可視データが必要となる。IoTはそのための有効な手段になり得る。第2の壁の突破には、先述した5つのキーポイントごとに、リーダーが小まめにフォローすることが必要となる。現場では、実在の課題で改善を実践することが重要だという。第3の壁を越えるには、改善行動に関しては、現場にチャレンジの推奨と失敗の許容を宣言することであり、安心して積極的に取り組める環境づくりが重要だとしている。
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