三菱電機は、研究開発戦略について発表。中心となるコンポーネントでの技術力を基軸としつつ、AIや自律制御などのデジタル技術を組み合わせることで新たな価値創出に取り組む。また、将来に向けた「フォアサイトテクノロジー」として「光電融合技術」「カーボンリサイクル技術」「量子技術」を強化する。
三菱電機は2025年1月15日、研究開発戦略について発表。中心となるコンポーネントでの技術力を基軸としつつ、AI(人工知能)や自律制御などのデジタル技術を組み合わせることで新たな価値創出に取り組む。また、将来に向けた「フォアサイトテクノロジー」として「光電融合技術」「カーボンリサイクル技術」「量子技術」を強化する。
三菱電機では、サステナビリティの実現を経営の根幹に位置付け、循環型デジタルエンジニアリングによる成長を生み出そうとている。それにより、社会や環境と事業成長がトレードオフの関係になるのではなく、両者が共に繫栄する「トレードオン」の実現に取り組んでいる。
しかし、現状だけを見ると、両者がトレードオンになるのは難しい。そこで、重要になってくるのが、技術的なブレークスルーだ。三菱電機ではこのトレードオンを実現するための技術戦略として、以前から強みを持ち、磨き上げ続けている「コンポーネント」、現在強化を進めている「デジタル」、将来的な社会インパクトが大きな「フォアサイトテクノロジー」、パートナーとの連携で進める「共創」という4つの領域に分けて、それぞれで強化を進める方針を示している。
三菱電機 常務執行役 CTO(技術戦略担当)の佐藤智典氏は今回、技術戦略を発表した理由について「前回発表したのは2019年となる。その後に三菱電機としての経営戦略として循環型デジタルエンジニアリングなどを発表し、技術面でこれらの変化を支える方向性を示すべきだと考えた。また、従来の技術開発ではコンポーネントに関連する技術が中心だったが、デジタル技術やフォアサイトテクノロジーなどに積極的に投資をし、一歩先を行く技術開発やゲームチェンジにつながる技術開発に取り組むべきだと考え、それを示したかった」と語っている。
その中で、現在強化をしているコンポーネント領域とデジタル領域は、それぞれの強化領域をデジタル基盤「Serendie」などを通じて、連携させることで新たな価値創出に取り組む方針だ。コンポーネント領域では、「パワーエレクトロニクスデバイス」「メカトロニクス」「空調/冷熱」「センシング」などの技術群、デジタル領域では「インテリジェント自律制御」「サイバーセキュリティ/暗号」「AI/生成AI」をコア技術と挙げている。
強化しているデジタル関連技術では、インテリジェント自律制御として、多くのコンポーネントやシステムが複雑に連携する大規模なシステムを対象に統合的な運用管理と、自律的な稼働を実現する技術開発を進めている。統合管理では、複雑系最適制御技術や、建物熱モデリング/制御技術、軽量ブロックチェーン技術を開発。自律稼働に向けては、ロボット自律制御LLM(大規模言語モデル)、高精度位置測定技術、音声分離/認識技術などを開発している。
サイバーセキュリティ/暗号化では、攻撃者のさまざまな攻撃に対する防御技術や、影響の最小化を実現する技術開発に取り組んでいる。具体的には、攻撃検知技術、秘匿検索技術、耐量子計算機暗号技術、プライバシー保護技術、攻撃シミュレーション技術、動的マイクロセグメンテーション技術などを開発している。
AI/生成AIについては、保守や製造などのさまざまな現場で多様な環境に対応する適応性と信頼性が高い技術の開発を行う。具体的には、従来比10分の1の学習データで高精度制御を行えるNeuro-Physical AI技術、コンパクト/リアルタイム技術、環境適応技術、人と協調するAI技術、分散協調AIエージェント、性能保証技術などの開発に取り組んでいるという。
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