「日本は製造業のパワーハウス」、IFSが産業AI投資を急拡大する理由製造ITニュース

IFSジャパンは記者会見を開催し、日本市場への投資継続とパートナーシップ強化の方針を説明した。日本IBMらとの戦略的協業を通じ、製造業などアセット集約型産業のAI実装とDXを支援する。

» 2026年05月29日 07時30分 公開
[安藤照乃MONOist]

 IFSジャパンは2026年5月27日、東京都内で開催したユーザーイベント「IFS Connect Japan」に併せて会見を開き、AI(人工知能)を活用したサステナビリティ管理の新製品「IFS Zero」の発表や、日本市場への投資計画について説明した。会見には、日本IBM 常務執行役員の山之口祐一氏らも登壇し、製造業をはじめとするアセット集約型産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた協業体制をアピールした。

(左から)IFS 最高サステナビリティ責任者(CSO)のソフィー・グラハム氏、IFS グローバル最高製品責任者(CPO)のダニエル・ダットン氏、IFS CEOのマーク・モファット氏、日本IBM 常務執行役員の山之口祐一氏、IFSジャパン 代表取締役社長の大熊裕幸氏、IFS 中東アジア地域担当 プレジデントのハンネス・リーベ氏 (左から)IFS 最高サステナビリティ責任者(CSO)のソフィー・グラハム氏、IFS グローバル最高製品責任者(CPO)のダニエル・ダットン氏、IFS CEOのマーク・モファット氏、日本IBM 常務執行役員の山之口祐一氏、IFSジャパン 代表取締役社長の大熊裕幸氏、IFS 中東アジア地域担当 プレジデントのハンネス・リーベ氏

日本市場は製造業の「パワーハウス」である

 IFSは、産業用AIのプロバイダーとして、クラウドベースの「IFS Cloud」を中心に事業を拡大している。グローバルの業績は好調に推移しており、2026年第1四半期決算では、経常収益が前年比25%増、クラウド売上高が同24%増を記録した。純収益維持率は114%で、経常収益比率は総収益の84%を占めている。

IFSのマーク・モファット氏 IFSのマーク・モファット氏

 IFS CEOのマーク・モファット氏は成長の要因について、「顧客がわれわれのソリューションから価値を生み出していることが証だ」と語った。また、今後の新たな戦略として価格体系の変更にも言及。「従来のユーザー数ベースの課金から、管理する設備や資産の数に応じた課金体系への移行を進めている。さらに、AI実装プログラムの『Nexus Black』や、エージェントAIプラットフォームの『IFS Loops』などへの投資を通じ、AIエコシステムの拡大を進めている」(モファット氏)と強調した。

IFSソリューションの製品アップデート IFSソリューションの製品アップデート[クリックで拡大]
IFSのハンネス・リーベ氏 IFSのハンネス・リーベ氏

 日本市場の戦略的な位置付けについても語った。IFS アジア・中東地域担当 プレジデントのハンネス・リーベ氏は、日本を「IFSにとって3大戦略的マーケットの1つであり、製造業をはじめとするアセット集約型産業の『パワーハウス』だ」と表現した。

 日本法人であるIFSジャパンのビジネス規模は、2023年から2025年の3年間で契約総額が4倍、受注額、従業員数ともに3倍へと成長した。今後も日本の人材教育やエコシステム拡大への投資を継続し、セキュリティやコンプライアンスといった日本市場の需要に合わせた製品開発を進める方針である。

リアルタイムで炭素排出量を管理する「IFS Zero」を発表

IFSのソフィー・グラハム氏 IFSのソフィー・グラハム氏

 イベントでは、新たなソリューションとして自律型炭素排出量管理システム「IFS Zero」を発表した。

 炭素排出量などのサステナビリティ管理において、「多くの企業がスプレッドシートベースでの報告にとどまっており、実際の発生源やリアルタイムな状況が把握できていない」とIFS 最高サステナビリティ責任者(CSO)のソフィー・グラハム氏は課題を指摘した。IFS Zeroは、工場の設備や機械に取り付けたセンサーから直接データを収集し、エージェンティックAIを活用して排出源をリアルタイムで可視化するものだ。

「例えば、製造ラインでエネルギー消費が急増した場合、従来は四半期ごとのレポートでしか把握できなかったが、IFS Zeroであればリアルタイムに発生源が分かる。異常検知や予測型メンテナンスに直接つながるものだ」(グラハム氏)

日本IBMなどとの協業強化でAI導入を支援

 IFSが日本市場で事業を拡大する上で重要視しているのが、パートナー企業との協業である。会見では、NECとの経済安全保障に対応したDX推進システムの開発での協業や、電通総研とドリームインキュベータの3社で進める製造業の生産管理/サプライチェーン最適化に向けた協業などを説明した。

日本IBMの山之口祐一氏 日本IBMの山之口祐一氏

 また、特別ゲストとして戦略的協業を推し進める日本IBMの山之口氏が登壇した。両社は、IFSが持つ産業用AIと、IBMが持つ「AIエージェント型のエンタープライズ開発支援ツール」をはじめとするAI技術やコンサルティング実績を組み合わせることで、顧客の業務変革を後押しする構えだ。

 山之口氏は「IFSの導入における要件定義、設計、開発から運用保守に至るまでの全フェーズにおいて、包括的かつ効果的な価値の最大化を図る」と語った。先行しているプロジェクトでは、AIエージェント導入基盤の活用により、これまで160時間かかっていた工程が5時間に最適化され、大規模なデータ修正や特殊障害への即時対応も時間削減効果が確認できたという。

「AIで代替される雇用以上に、新たな仕事が創出される」

 日本市場特有の課題や、AI時代における雇用の在り方についても見解を示した。

 日本の製造業に長年蓄積された既存設備へのデータ接続のハードルについて問われると、モファット氏は「AIは決して『魔法の杖』ではない」と説いた。システムを導入すればすぐに解決するわけではなく、「顧客データジャーニーのどこにいるのか、現在地を正確に把握し、必要なデータを抽出するための泥臭い作業を、パートナー企業とともに進めていく必要がある」と、地に足の着いたアプローチの重要性を語った。

 また、「AIの普及に伴い、人間の役割はどう変化するか?」と問われると、世界経済フォーラムのレポートを引き合いに出し、「AIによって代替される雇用はあるが、それを上回る数の新たな仕事が創出される」(モファット氏)と説明した。

「AIの実装によって生産性は爆発的に向上し、経済成長が加速する未来がくると信じている。特に深刻な人口動態の課題を抱える日本において、AIは製造業の成長を支え続けるための強力なプラスファクターになるはずだ」(モファット氏)

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