ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は、製造業の投資内容について解説します。
前回は、経済協力開発機構(OECD)のデータベースを基に、日本製造業の「付加価値と投資の関係」について解説しました。日本企業は、投資額は一定水準を維持しているにもかかわらず、付加価値が増えず、企業自体や労働者の取り分が目減りしてきました。その中で良いモノを安くたくさん作る方向だけでなく、高くても売れる価値の高いモノを生み出す方向に進むことも検討すべきだとお伝えしました。
さて、今回は、前回と同じくOECDのデータベースを基に、日本製造業の投資の種類と規模について紹介します。
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前回紹介したように、日本の製造業は国内では最大産業ですが、かつてよりも「稼ぎ」である「付加価値」が目減りしています。一方で、国際的に見れば投資の規模は比較的大きいという特徴があります。つまり、その投資が付加価値の向上に生かされていないばかりか、維持費用が事業の重しとなっているような状況なのです。
そこで「日本の製造業はどのようなものに投資してきたのか」について、今回は掘り下げたいと考えています。OECDのデータベースでは、SNA(System of National Accounts)に基づいた区分で、種類別の投資についても集計されています。日本の製造業がこれまで、何にどのくらい投資してきたのか着目してみましょう。
SNAにおける投資(総固定資本形成)は、主に次のように分けられます。
建物や機械などの有形固定資産だけでなく、研究/開発やソフトウェアなどの無形資産への投資もしっかりと集計されているようです。
具体的に日本製造業の投資の種類と推移を見ていきましょう。図1が、投資の種類ごとの推移となります。
機械/設備(青)と建物/構築物(赤)は1990年のバブル崩壊を機に縮小し、その後は一定規模で推移してきました。機械/設備は概ね15兆円前後、建物/構築物は5兆円前後です。減り続けているわけではなく、ピークよりも減ってはいるものの一定規模が保たれてきたという見方が適切かもしれません。
一方で、知的財産生産物(緑)はバブル崩壊後も右肩上がりで拡大してきました。内訳を見ると、その多くは研究/開発への投資となっています。ソフトウェアなども、2000年代以降は横ばい傾向ですが、かつてよりも増えています。ハードウェアへの投資よりも、将来価値を生み出す研究開発(R&D)への投資が大きく拡大してきたことになります。
ここからは固定資産の種類ごとに、各国の投資の規模について国際比較をしていきます。比較方法として、製造業が稼ぎ出す付加価値との比率(対付加価値比)と、労働者1人当たりの金額水準(為替レートによるドル換算値)を計算してみました。
まず、建物/構築物について見ていきます。図2が建物/構築物についての投資の比較です。製造業における建物/構築物への投資は、工場が大きいですね。それ以外にも、オフィスビルや研究施設なども含まれます。
日本の製造業の建物/構築物への投資は、相対的に見れば1980年代には非常に高い水準となっていました。当時は稼ぎ出す付加価値の6%前後を建物/構築物への投資に回していたことになります。バブル崩壊後は低下して、一定水準で推移しますが、フランスとともに4%前後が続き、主要先進国の中では高い水準が維持されています。近年でも付加価値に占める割合としては、ドイツと4倍近くも差があります。
図3は、労働者1人当たりの建物/構築物への投資金額の国際比較となります。
日本は1980年代から相対的に高水準が継続されてきたことが分かります。投資そのものは減っていますが、労働者も減っているので、労働者1人当たりの金額としては一定規模の高い水準が維持されてきたことになります。
最近では米国、英国、フランスなど他の主要先進国に追い付かれていますが、製造業の活発なドイツ、イタリアとは大きな差があるのも特徴的です。ドイツやイタリアでは国内で新しく工場を建てるよりも、海外拠点への投資や、既存の建物/工場の活用などが進んでいるのかもしれませんね。
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