ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は、OECDのデータベースを基に、日本製造業の付加価値と投資の関係について紹介します。
前回は、国際通貨基金(IMF:International Monetary Fund)の最新データから、“われわれの豊かさ”を見る「1人当たりGDP」の国際比較を行いました。“失われた30年”の期間で、1人当たりGDPは、為替レート換算値でも購買力平価換算値でも相対的に日本の立ち位置は低下してきた様子が見られました。
今回は、経済協力開発機構(OECD)のデータベースを基に、日本製造業の「付加価値と投資の関係」について紹介します。
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われわれの経済活動を国際比較できるように体系化された統計が「国民経済計算(SNA:System of National Accounts)」です。OECDではSNAの構造に基づいて各国の詳細な統計データが集計/公表されています。今回は、このSNAのデータから、日本製造業の投資がどれだけ付加価値の向上に結び付いているのか、各国比較を通じて確認していきます。
経済活動の規模を測る指標として、国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)が知られています。SNAでは、製造業や建設業、サービス業などの経済活動別の付加価値が集計され、それらの合計がGDP(生産面)として計算されています。
付加価値(Value added)とは、売上高から仕入費用を差し引いたもので、われわれ労働者が働いて生み出した「仕事の金額的価値」です。そして、付加価値はその生産に関わった人たちに分配される所得の総額でもあります。皆さんがニュースなどでよく耳にするGDPとは、まさにこの付加価値を日本全体で合計した数値という意味です。
さらにSNAでは、投資(総固定資本形成)についても集計されています。ここでの投資とは、株式投資のような金融投資や、人材投資といわれるような企業内教育という意味ではありません。機械/設備や、建物/施設、研究/開発、ソフトウェアなど、複数年にわたって生産能力を提供する固定資産への支出が、SNAにおける投資と位置付けられます。
われわれの企業活動は投資によって生産能力を高め、より高度なものを生み出したり、よりたくさん作ったりして付加価値を拡大していくこととして捉えることができます。つまり、投資と付加価値は切っても切れない関係だといえます。
日本は“失われた30年”の中で、企業が投資をしなくなったといわれています。では、実際に日本の製造業ではどのような変化が進んできたのでしょうか――。製造業における投資と付加価値の関係について、国際比較をすることで日本の製造業の特徴を可視化してみたいと思います。
まずは、日本の製造業の投資と付加価値について、その推移から見ていきましょう。図1は、日本の製造業の付加価値(青)と投資(総固定資本形成、赤)の推移を可視化したものです。
日本の製造業が稼ぐ付加価値は、2023年は122兆円となっており、GDPの約20%を占めています。これを見ると、日本の製造業は、今もなお最も付加価値を稼ぎ出す最大産業だといえます。
ただし、図1のグラフ推移から分かる通り1997年の127兆円をピークにして減少傾向が進み、リーマンショック後はやや回復傾向ですが、近年でもまだ当時のピーク値を超えていません。
実はこの日本の製造業の付加価値の推移は、日本全体の傾向を示すGDPや労働者の平均給与とも類似した変遷となっています。いかに日本の経済において、製造業の影響が大きいかが分かりますね。
一方で、投資の総額となる総固定資本形成を見ると、1991年のピークからアップダウンしつつ横ばい傾向が続いています。2023年では40兆円と、稼ぎである付加価値の3分の1が投資に回っている状況です。日本の製造業では、付加価値も投資も一定規模で推移してきたことが読み取れます。
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