「環境に良いことしかやらない」 MIRAI-LABOはなぜ独自製品を生み出せるのか製造業“X”探訪(6)MIRAI-LABO(1/3 ページ)

多くの製造業がDXで十分な成果が得られていない中、あらためてDXの「X」の重要性に注目が集まっている。本連載では、「製造業X」として注目を集めている先進企業の実像に迫るとともに、必要な考え方や取り組みについて構造的に解き明かしていく。第6回は「環境に良いことしかやらない会社」を掲げるMIRAI-LABOを取り上げる。

» 2026年07月27日 08時00分 公開
[西垣淳子, 楠和浩MONOist]

 製造業DX(デジタルトランスフォーメーション)において、本質的な「X(ビジネス変革)」の在り方が問い直される中、成功している製造業はどのような取り組みを進めているのだろうか――。第6回は「環境に良いことしかやらない会社」を掲げ、独自の研究開発力と知財活用力で強みを発揮する八王子市のMIRAI-LABOを紹介する。

≫ここまでの連載「製造業“X”探訪」

本連載の趣旨

photo 政策研究大学院大学 特任教授の西垣淳子氏(左)と早稲田大学 研究戦略センター 教授の楠和浩氏(右)

前石川県副知事で政策研究大学院大学 特任教授の西垣淳子氏と、早稲田大学 研究戦略センター 教授の楠和浩氏が「製造業X」を体現している企業や現場を訪問し、次世代を担う製造業の変革の姿を紹介する。また、その姿がインダストリー4.0などで示された参照モデルの中で、どういう位置付けを担うのかを示しつつ、成功のポイントについて議論する。

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「環境に良いこと」×「3つのコア技術」で独自製品を展開

MIRAI-LABOの概要

photo MIRAI-LABOの新本社 出所:MIRAI-LABO

 MIRAI-LABOは、東京都八王子市に本社を置き、2006年4月に設立された環境関連企業である。創業以来「環境に良いことしかやらない会社」を掲げ、CO2削減や省エネルギー、再生可能エネルギー分野を中心に、製品開発、製造、販売を一貫して手掛けている。

 同社の起源は、「ホタルの再生」事業にある。独自のバイオテクノロジー技術と水の循環により水質を改善し、ホタルの生息地の再生を実現した。その過程で「生態系を保全すること」と「人の安全を守ること」の矛盾に直面し、それが街路灯の在り方そのものを問い直す技術開発につながった。

 以降、LED照明や省エネ照明システム、自然エネルギー発電設備、環境型街路灯の開発に加え、EVの中古バッテリー診断や再利用技術の研究など、循環型社会の実現に向けた幅広い事業を展開している。また、脱炭素社会の実現を目指し、資源の有効活用やエネルギーインフラの革新を通じて、持続可能な社会の構築に貢献することを企業ビジョンとしている。


 「地元の川にホタルを再生したいという思い」から起業したというMIRAI-LABOは、企業理念を「環境主義」とし、企業ビジョンに「環境に良いことしかやらない会社」を掲げる。実際に製造販売している製品群を見ると、バッテリー式投光器「X-teraso」、充電式特殊LEDライト「TRACE-2000A」、可搬式蓄電池「G-CROSS」、自律型スマート街路灯「THE REBORN LIGHT smart」など、環境に関連する多彩な製品を展開している。

 コア技術は「照明」「バッテリー」「ソーラー(太陽光発電)」の3つで、これらのコア技術と「環境に良いこと」を結び付けることで、独自性のある製品展開につなげている。この独自性のある企業コンセプトと、採算性や効率性をいかに両立して事業を進めてきたのかに関心を持ち、八王子市のMIRAI-LABO新本社に、代表取締役社長の平塚利男氏を訪ねた。

 2006年の創業から20周年を迎えたMIRAI-LABOだが、その名が大きく広まるきっかけとなったのが、東日本大震災後の2019年に、福島県浪江町に設置した自律型ソーラー街路灯「THE REBORN LIGHT」だった。

photo MIRAI-LABO 代表取締役社長の平塚利男氏(右)と、常務取締役 事業戦略室長の平塚雷太氏(左)

 浪江町の一部地域では、東日本大震災による被害で街から街路灯がなくなり、さらに街路灯用の配電網の再整備もままならない状況が続いていた。しかし、「街に明かりがない」という環境は、住人にはじわじわと心理的負担を与えていた。そういう話を平塚利男氏が聞き付けたことから、電力網が遮断されていても明かりをともし続けることができる自律型の街路灯の開発を開始した。

「THE REBORN LIGHT」を支えた技術力

 THE REBORN LIGHTの開発が速やかに実現できたのは、MIRAI-LABOがこれまで開発してきた製品とそれらに関連するコア技術を生かせたからだ。

 THE REBORN LIGHTの開発に当たり、平塚利男氏が目を付けたのが、電気自動車(EV)で使用されなくなったバッテリーだ。EVという過酷な環境下で高い性能や安全性が要求される自動車用バッテリーは、EVとしての使用が難しくなっても高い性能や信頼性を保っており、他の用途であれば問題なく使えるケースも多い。これを街路灯のバッテリーとして再利用できるのではないかと考え「リパーパスバッテリー(※)」という発想にたどり着いた。

(※)リパーパスバッテリー:EV用のバッテリーを、目的を変えて再製品化したもの

 MIRAI-LABOでは、可搬式蓄電池「G-CROSS」などの製品を展開しているが、ここで使われているバッテリー制御技術などを横展開することで、リパーパスバッテリーについても安定性や信頼性を確保することにつなげている。THE REBORN LIGHTで最初に採用したのは、日産自動車のEV「リーフ」のバッテリーだ。リーフ向けに開発された高品質で安定性の高いバッテリーに対象を絞ることで、それに特化して再活用する技術を開発することにつながった。

photophoto MIRAI-LABOのバッテリー式投光器「X-teraso」(左)と可搬式蓄電池「G-CROSS」(右)

 そこに、もう一つのコア技術である太陽光発電パネルの発電制御技術を組み合わせることで、昼間は太陽光発電パネルで発電するとともにバッテリーに蓄え、夜間はその電力を照明に利用するTHE REBORN LIGHTが完成した。2019年に浪江町の国道114号線に12基が設置され、現在も稼働し続けている。

photo 浪江町に設置された「THE REBORN LIGHT」[クリックで拡大] 出所:MIRAI-LABO

 このTHE REBORN LIGHTの開発は、MIRAI-LABOが当初から重視する思いと、技術開発力をよく表している。EVのバッテリー再利用と、被災地に明かりをともし続けるという社会課題の解決を両立し、「環境に良いことしかやらない」という企業ビジョンを体現する取り組みとなっている。

THE REBORN LIGHT smartなど、さらなる用途の拡大

photo MIRAI-LABO本社前に設置された「THE REBORN LIGHT smart」[クリックで拡大]

 THE REBORN LIGHTは、この後、照明以外(スマートフォン端末への充電など)の用途でも充電した電力を利用できるようにした「THE REBORN LIGHT smart」に進化し、さらに用途を広げている。

 独立型の非常用電源として活用できる他、監視用カメラなどを設置し、防犯用途でも活用できるようにした。監視カメラの設置については、MIRAI-LABOが持つコア技術の1つである照明関連技術を活用した。

 一般的な監視カメラは、光のない夜間には赤外線を用いたナイトモードで撮影する。この場合、映像が白黒になるため、昼間のカラー映像に比べてAI(人工知能)が画像解析に利用できる情報量が減るという課題がある。しかし、THE REBORN LIGHT smartは、広範囲を均一に照射する照明技術により夜間でも鮮明なカラー撮影ができる。そのためAIによる解析も昼夜の区別なく行える。

 さらに、MIRAI-LABOは、照明技術の一環として独自の高効率リフレクターを保有し、配光を工夫することで、カメラの前に人や運搬物があっても、影の発生を抑えながら撮影範囲を均一に照らすことができる。この技術により、自律型の街路灯の光で高性能カメラでの撮影を可能とし、防犯にも貢献する。最近では、街路灯としてだけでなく、不法投棄場所の監視や害獣対策地域の監視などの引き合いも増えており、環境だけでなくレジリエンスの強化につながると評判になっている。

 なお、こうした成果として、2025年度には単独製品/単独企業では初となる「ジャパン・レジリエンス・アワード 最優秀賞(第11回)」を受賞している。

photo 「ジャパン・レジリエンス・アワード 最優秀賞(第11回)」の授賞式の様子[クリックで拡大] 出所:MIRAI-LABO
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