AIエージェントの普及が進む中で、製造業の業務を支えるITシステムの在り方も大きく変わろうとしている。「SaaSの死」といわれる中で、AIエージェントによるシステム環境の変化について解説する。後編では、具体的な製造ITシステムがAIによってどう変わるかを解説する。
「SaaSの死」を切り口に、製造業務に関係の深い「製造IT」において、AI(人工知能)の浸透がどういう影響をもたらすのかを取り上げた本連載ですが、前編では「SaaSの死」の本当の意味と、AIが業務システムにもたらすものの全体像について解説しました。後編となる今回は、AIと製造業務の関係についてさらに具体的な形に掘り下げたいと思います。
少し昔話にお付き合いください。筆者が「AI」という言葉を意識したのは1990年代後半のことです。
当時、筆者はマレーシアで工場向けソフトウェアのインテグレーションを行うDATA COLLECTION SYSTEMSグループを起業したところでしたが、SCM(Supply Chain Management)ベンダーであるi2 Technologies(現在のBlue Yonder)のアライアンスパートナーとなっていました。
i2 Technologiesは、テキサス・インスツルメンツでAIを研究していたSanjiv Sidhu(サンジブ・シドゥ)氏が創業した企業です。そのため、i2 TechnologiesのSCMソフトウェアには、AI的な要素が組み込まれていました。当時は、「AI」ではなくフルネームの「Artificial Intelligence(人工頭脳)」と呼ばれていましたが、リリースされた「RHYTHM」はAIロジックを組み込んだソフトウェアでした。
ちなみにi2 Technologiesはその後、JDAソフトウェアに買収され、このJDAソフトウェアは後にBlue Yonderと社名変更し、2021年にパナソニック コネクトの100%子会社となっています。筆者が起業したDATA COLLECTION SYSTEMSも後に、現在のパナソニック コネクト(当時はパナソニックファクトリーソリューションズ)に買収されており、不思議な縁を感じます。
さて、ここからが本題です。AIと製造業務の関係について考察する前に、まずは筆者の所属するRootstockが毎年実施している調査「2nd Annual State of AI in Manufacturing Survey」の結果を共有したいと思います。
2025年に実施した調査では、米国、英国、カナダの製造業369社から回答を集め、AIの活用状況、優先投資事項などを聞きました。詳しく見ていくと、AIを巡る主要トレンドが浮き彫りになっています。以下に主要なトレンドについて紹介していきます。
(※)調査結果レポートはこちらからダウンロード可能です。
最新の調査結果では、前年に比べAIへの取り組みがさらに進んだ結果となっています。また、回答いただいた企業の82%が18カ月以内にAI予算を拡大する計画を持ち、そのうち、23%は26〜50%の大幅な予算増を見込んでいます。
今回、筆者が興味を持った調査結果は、AI活用で重要な役割を果たすポイントの1つとしてクラウドERPが挙がってきたことです。前回の記事でも少し触れましたが、「SaaSの死」はSaaS型で提供されるソフトウェアそのものが使われなくなるというよりも、AI時代に対応できずに使われなくなることだと説明しました。ERPには業務の膨大な知見がデータとして蓄積されていますが、オンプレミスの場合、データをAIで学習できるように集めてくる作業に大きな負荷が生じます。そのため、AI時代に対応するためには、クラウドERPが不可欠だという認識が強まっているように感じます。
グローバルでは既にクラウドERPが主流となっており、海外の製造業もクラウドERPを使っています。日本の製造業が競争すべき海外企業は、ERPやSCMに関するデータについて、ある意味で“AIレディ”になっているといえるのです。では、具体的なAI活用領域を見ていきましょう。
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