「BATTERY JAPAN 秋 第19回 国際二次電池展」の基調講演にパナソニック エナジー CTOの渡邊庄一郎氏が登壇。同氏は、コロナ禍以降に車載リチウムイオン電池で攻勢を強める中国勢に対して、パナソニック エナジーが技術開発や生産体制の整備、人材育成、脱炭素対応などでどのような取り組みを進めて対抗しているかについて説明した。
2025年9月18日、「BATTERY JAPAN 秋 第19回 国際二次電池展」(同月17日〜19日、幕張メッセ)の基調講演にパナソニック エナジー 副社長執行役員 CTOの渡邊庄一郎氏が登壇した。渡邊氏は、コロナ禍以降に車載リチウムイオン電池で攻勢を強める中国勢に対して、パナソニック エナジーが技術開発や生産体制の整備、人材育成、脱炭素対応などでどのような取り組みを進めて対抗しているかについて説明した。
現在、世界のリチウムイオン電池市場で圧倒的な存在感を見せているのは中国勢だ。コロナ禍以降に急激に伸び始めて、現時点では圧倒的なシェアを獲得している。かつては高いシェアを誇っていたパナソニック エナジーも中国勢の波に飲まれてしまい、2020年から4年程で大きくシェアを落としてしまっている。
渡邊氏は「ただし、当社の年間生産量は2020年の26GWhから2024年には42GWhと倍近くまで増えている」と述べる。パナソニック エナジーの生産量が伸びずに中国に押し込まれているというよりも、同社は着実に生産量を増やしているものの世界全体の生産増強のスピード、特に中国勢が他社を上回る形で進んでいるというのが実情だ。
中国勢の事業拡大と同期する形で進んだ技術面の大きな変化としては、LFP(リン酸鉄リチウム)系電池の進化が挙げられるだろう。電池セル単体で見ると、LFP系電池のエネルギー密度は頭打ちの状態にある。しかし近年は中国メーカーを中心に、EV(電気自動車)などに搭載する電池の最終的なパッケージ形状である電池パックに直接電池セルを組み込む技術「セル to パック」の採用が広がっている。従来は、複数の電池セルを組み合わせた電池モジュールを電池パックに複数搭載するのが一般的だったが、この電池モジュールをなくすことにより、体積当たりのエネルギー密度が2020年ごろから劇的に増加し始めたのである。
これにより、EVに使用するLFP系角形セル搭載の電池パックの中には、パナソニック エナジーが手掛ける円筒形電池セルを用いた電池パックと同等以上のエネルギー密度を持つものが登場している。LFP系電池について渡邊氏は「車体構造の中にそのまま電池セルを並べることで、従来の車載リチウムイオン電池で一般的だった三元系と遜色ないレベルにまで来た。われわれの円筒形電池セルを用いる電池パックでは、1個の電池セルが燃えるようなことがあっても電池パック全体が燃えないように安全設計をしているが、LFP系はそういったことを割り切りながら電池パックの性能を上げてきている」と分析する。
EVの普及の鍵になるとされているのがリチウムイオン電池の価格だ。当初日本企業の独占状態にあったリチウムイオン電池だが、ノートPCから携帯電話機など搭載機器が拡大するとともに韓国/中国企業が参入したタイミングで第1期の大幅な価格低下の波が起きた。その後、EV普及と中国勢を中心とした巨額の投資があった際に第2期の価格低下の波が発生しており、現在はLFP系の普及や政策支援を背景に第3期の価格低下の波に突入している。リチウムイオン電池が登場した当初と比べて価格は約5分の1にまで下がっている。渡邊氏は「われわれのゴールは、ガソリンを燃料に用いる内燃機関車にEVが対抗できるように安価なリチウムイオン電池を提供することだ。そのためには、さらにもう1段階価格を下げねばならない」と強調する。
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